2012年9月17日に発表されたWindows Azure Webサイトのアップデートでは、いくつかの新しい機能が追加された。本稿では、”Freeモード”と呼ばれる無償で利用できるモードの特徴と制限を確認し、Webサイトを実際に展開するところまで紹介する。
Windows Azure Webサイトの無償版
Windows Azure Webサイトは、Windows Azure上でWebサイトをホスティングすることに限定したサービスである。従来からあるWebロールとは異なり、ユーザーがインスタンスの起動や管理を行う必要はなく、Webアプリケーションを配置するだけでよい。
本機能には、以前より”共有(Shared)モード”と”予約(Reserved)モード”があったが、これに”無償(Free)モード”が新たに加わった。”無償(Free)モード”では、Webサイトで利用できるリソースに上限はあるが、課金を気にすることなく利用できるようになっている。
各モードの特徴と制限について
以下の表に、”Freeモード”、”Sharedモード”、”Reservedモード”の特徴と制限をまとめた。なお、Windows Azure Webサイトは、現在はプレビュー期間中のため、制限や価格は今後、変更される可能性がある。
比較項目 | 無償(Free) | 共有(Shared) | 予約(Reserved) |
ホスティング環境 | 共有 マルチテナント型 |
共有 マルチテナント型 |
インスタンス占有 |
カスタムドメイン | 利用不可 | 利用可 | 利用可 |
サイト数 | 最大10サイト | 最大100サイト | 最大100サイト |
ストレージ | 1GB | 1GB | 10GB |
MySQL DB | 20MB | 20MB< | 20MB |
データ転送(受信) | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
データ転送(送信) | 上限165MB/日 | 5GB/月まで無償 以降は従量課金 |
5GB/月まで無償 以降は従量課金 |
CPU時間 | 上限60分/日 2.5分/5分 |
上限240分/日 2.5分/5分 |
占有のため制限なし |
インスタンス数 | 最大3インスタンス | 最大3インスタンス | 最大3インスタンス |
インスタンスサイズ | 選択不可 | 選択不可 | S, M, Lから選択 |
費用 | 無償 | 1.14円/時間 ※プレビュー期間中 |
7.00円/時間 ※プレビュー期間中 |
※参考:Pricing Details
http://www.windowsazure.com/en-us/pricing/details/
“Sharedモード”は、サイト数の上限が増加し、通信量の上限もなくなっているが、無償期間はなく課金が行われる点が以前とは異なる。代わりに、”Freeモード”では、上限はあるが完全に無償で利用できるのが特徴となっている。
”Freeモード”のWebサイトを作成
Windows Azure Webサイ トにPHPで開発されているオープンソースCMSであるWordPressを展開するところを一例として紹介する。わずかなステップでWebサイトが展開できることを確認してほしい。
Windows Azure管理ポータル
にアクセスし、左下の[New]ボタンからメニューを開く。
図1:Windows Azure管理ポータルから新規作成メニューを開く
表示されたメニューから[Compute] – [Web Site]を選択する。
図2:Webサイトの新規作成
Webサイトは現時点では、Previewの機能であるため、事前に利用したいPreviewに申し込みを行う必要がある。プレビュー機能のページから[Web Sites]の[try it now]ボタンをクリックし、画面に従って申し込みを行うと上記の画面から[Web Site]が選択可能となる。
[Web Site]を選択すると次のメニューが表示されるので、[From Gallery]を選択する。
図3:ギャラリーからWebサイトを作成
ギャラリー画面では、Windows Azure Webサイト上ですぐに展開可能なオープンソースのWebアプリケーションを選択することができる。ここでは、[WordPress]を選択し、次へ進む。
図4:ギャラリーからWordPressを選択
WebサイトのURLを入力し、次へ進む。
図5:WebサイトのURLを設定
WordPressではMySQLを使用するため、MySQL Databaseの名前を確認し、[I agree to ClearDB’s …]にチェックを入れ、完了をクリックする。
図6:ClearDBが提供するMySQL Databaseを構成
Webサイトの一覧画面に戻り、新規サイトの生成と展開までが数十秒で完了する。
図7:Webサイトのステータスを確認
Webサイトのステータスが[Running]と表示されれば、そのWebサイトは正常に稼働している。
Webサイトのモードの確認
Windows Azure Webサイトでの新規サイトの立ち上げまでを見てきたが、Webサイトのモードを意識する手順は特になかった。もう一度、Windows Azure Webサイトの一覧画面を確認してみよう。
図8:Webサイトのモードを確認
[Mode]を確認すると”Free”と表示されていることが分かる。
つまり、作成したWebサイトはデフォルトでは”無償モード”になるということだ。
WordPressサイトの確認
最後に、WordPressの初期画面が表示されるところまで見ていきたい。先の画面からWebサイト名をクリックするとWebサイトの管理画面が表示される。
図9:サイトURLおよびFTP接続先の確認
[Site URL]がリンクになっているので、ここから作成したWebサイトにアクセスできる。Webサイトのドメイン名は、「[Webサイト名].azurewebsites.net」という形式になる。
ちなみに、FTPでアクセスする場合は、事前に[Reset deployment credentials]からユーザー名とパスワードを設定しておくことで、FTPで接続することができる。
WebサイトのURLにアクセスするとWordPressの初期設定画面が表示されるので、必要事項を入力し、[Install WordPress]をクリックする。
図10:WordPressの初期設定
WordPressの初期設定が完了すると、設定したユーザー名とパスワードでログインできるようになる。
図11:WordPressのホームページ
今回は、Windows Azure Webサイトの”無償モード”について紹介し、実際にWebサイトを立ち上げるところまでを確認した。次回は、”無償モード”について、もう少し掘り下げてみていきたい。
参考
Announcing: Great Improvements to Windows Azure Web Sites
http://weblogs.asp.net/scottgu/archive/2012/09/17/announcing-great-improvements-to-windows-azure-web-sites.aspx
Pricing Details
http://www.windowsazure.com/en-us/pricing/details/