rush(サイト・英語)はRubyの文法が使えるオブジェクト指向シェルだ。ここで言っているオブジェクト指向とは、単純に文字列を操作したり受け渡しているだけではなく、メソッドや属性を持つ本物のRubyオブジェクトが使えるという意味である。つまり以下のように、'ls -l /var'とコマンドを打つかわりに、ディレクトリオブジェクトのlsメソッドを呼ぶことができる。
rush> root['/var/'].ls
//var/
db+
lib+
log+
run+
[...]
rushではオブジェクト指向言語が持つ全ての恩恵が得られる形で、一般的なUnix環境で使われる殆どのビルトインコマンドとコアユーティリティの代替となるようサポートされている。さらに、
rushは単なる対話的シェルやライブラリというわけではなく、一カ所から複数のリモートマシンを制御することもできます。サーバ間のファイルやディレクトリのコピーをローカルで行うかのようにシームレスに実行します。
我々はrushの開発者であるAdam Wiggins氏(source)から話を聞いた。
私はRubyを使い始めてからというもの、UnixのシェルをRubyの文法で置き換えたいと思っていました。状況が許せば、たくさんのバッククォートを使いつつRubyスクリプトとしてシェルスクリプトを書いています。
オブジェクト指向シェルは決して新しい概念ではない。例を挙げると、マイクロソフトは既に.NETベースの新しいWindows PowerShell(source)をWindows Server 2008にバンドルして出荷しているし、それはrushにもインスピレーションを与えるという形で役に立っている。
Rubyの強力なメタプログラミング機能のおかげで、rushの拡張はとても簡単にできる。例えば、(単一のマシンを表す)BoxというクラスにIPアドレスを返すメソッドを拡張しようとしたとする。このカスタマイズは.rush/env.rbファイルに、次のような新しいメソッドを追加するだけで事足りる。
class Rush::Box
def ip_address
bash("ifconfig | grep inet | grep -v 127.0.0.1").match(/addr:([\d.]+)/)[1]
end
end
rushにもどって、次のコマンドを実行するとIPアドレスが表示されるはずだ。
rush> Rush::Box.new.ip_address
192.168.1.104
サービスの開始や停止のような他の管理タスクや、データベス生成、iptablesの操作ルールなどを簡単に作る方法について、Wiggins氏はすでにいくつかのアイデアを持っているようだ。
"netstat -lptn" は、どのプロセスがどのポートを占有しているか見つけ出すのにとても便利なコマンドですが、他のコマンドと併用するのは困難です。
でもrushでは、このようにすればいいだけです。"box.processes.each { |p| p.kill if p.listen_port == 3000 }"
rushの長期的なゴールは以下のようなものだ。
/usr/binの階層にある何千ものコマンド(とbashのビルトインコマンド)を再実装するのは骨の折れる作業にみえるかもしれません。しかし、こういったコマンドのほとんどは、めったに使われないものではないかと思っています。きちんと実装された小さなサブセットは、私や他のUnixヘビーユーザがやろうとしていることの80%はカバーできます。特にクラスタ管理の領域は、私がrushをつくろうとした目的でもあります。rushライブラリは現在1500行のコードから成り、既にメジャーなファイルやプロセス操作のほとんどをカバーしています。だいたい1万行ぐらいのコードで、Unixシステムの管理で私がやりたい操作は一通りカバーできるのではないかと思っています。
rushについてもっと詳しく知りたければ、公式サイト(サイト・英語)をチェックするか、rushのGoogleグループ(サイト・英語)に参加するとよいだろう。RubyForgeのruSHプロジェクト(サイト・英語)は別のプロジェクトであることに注意が必要だ。こちらはもう活動していないようにみえる。