リッチインターネットアプリケーション(RIA)技術がメインストリームになるにつれて、ディベロッパの選択肢も増えていっている。AdobeのFlashベースのRIA開発フレームワークであるAdobe FlexとAIRは間違いなくこのマーケットのリーダだが、デビューを飾ったMicrosoft SilverlightもRIA分野において影響力を強めてきている。このことによってIT技術者コミュニティで広く議論をおこなう道が拓いた。
たとえば、AdobeのプラットフォームエバンジェリストのSerge Jespers氏の最近のブログ記事(リンク)では、FlexとSilverlightを比較しているが、これが白熱した論争の口火となった。そのハイライトをいくつか紹介しよう。
Jespers氏はSileverlightのいい点を示すとこから議論を始め、それは次のことに要約されている。
- 「まず私が気に入ったのはスレッドの考え方です。メインのスレッドを詰まらせることなく複雑なタスクを次々作れることは大変クールです。たとえば、別のスレッドで大量のデータを読み込んでいる時にもスムーズなアニメーションを表示することができるでしょう。」
- 「Silverlightアプリケーションはパラメータを設定するだけで、それが埋め込まれたHTMLドキュメントと直接通信をおこなうことができます。」
- 「C# でもVB.NETでもコーディングできることも素晴らしい特徴です。この2つの言語はWindowsプラットフォームのディベロッパにとってはとても馴染みのあることが特に重要です。私はそのようなディベロッパのひとりではありませんが、C#がActionScriptに似ていることは知っています。この 2つの言語以外で使われるのにはXAMLがありますが、これはMXMLと大体において同じものです。」
それから彼は悪い点と視覚的な欠点の指摘に移ります。
- 「XAMLとC#のコードはかなりくどいです。」
- 「コントロールの見かけを変えることはまさに悪夢です!正直な感想として、このことがSilverlightのアキレス腱になると思います。」
- 「私が理解に苦しむもうひとつのことは、テキストフィールドでHTMLタグをサポートしてないことです。」
- 「Expression(Silverlightの開発ツール)がベータ版であるのは知っていますが、それでもそれを構成するツール(それには既にベータ版ではなくなっているVisual Studioも含まれます)はバグだらけで不完全なものと言わざるをえません。」
- 「この3日間、Silverlightはデザイナのことを何もしらない人たちによって作られたのではないだろうかという思いが強くなりました。」
TimothyP氏(リンク)はこれにこう応えている。「Flashの問題はデザイナをターゲットにしていることで、デザイナが自分のことをディベロッパだと思うことがよくあります(もちろんデザイナだと思っているディベロッパがいることについても同じです)。」
そして「Monoを使えば.NetのスキルをMac OSやLinuxのアプリケーションでも生かすことができます。」とも加えている。
AdobeのMike Chambersはこれに反論する。「Monoを使った.Netについての私の経験からいえば、それはWindows上の.Netとはかなりかけ離れたもので、一部のものはまったく動作すらしません。それに、インストールはディベロッパのことしか考えてないように思えます。私ならこれでエンドユーザにアプリケーションを配布したいとは思いません。」
TheMidNightCodersのMark Piller氏(リンク)はSilverlightを輝かせている特徴として、統合開発環境(IDE)、Silverlight Beta 2で使えるようになったDataPush、ウェブサービスとの連携、ADO .NETとLINQの融合、そしてコミュニティの大きさを挙げている。
しかしFlexディベロッパのGareth Arch氏(リンク)とAdobeのKevin Hoyt氏(リンク)はよくされる批判を引き合いに出してこのPiller氏のコメントをいくつかの点で認めなていない。彼らがコメントした中には次のことも含まれている。
あなたの部隊を何度も支援したり守ったりしたのに、あなたがこんな不意打ちをしたのを聞いて驚いた感じです。BlazeDSはdata push(HTTPチャネル経由)を無償で提供するだけでなく、オープンソースとなっています。Flashプラットフォームはオープンであるため、 GraniteやRed5やWowzaのようなBlazeDSのスタックの大部分の代替となるものもあります。少なくともあなたなら、Flashプラットフォームのオープンさをもとにビジネスをおこなえば、そのオープンさに感謝することになりますよ。
この議論はMicrosoftのScott Barners氏(リンク)がこう訊ねたことで一段と激しくなった。
こんな疑問があります。今しようとしているの何なのでしょうか?一方のテクノロジに対してもう一方のテクノロジを正当化することでしょうか?もしそうなら、私たちは完敗です。この議論を意義あるものにしませんか。そして「5分使ってみた」以上の詳しい分析をして、他の人たちのためにもなるものにしませんか。
今ここで私が見ているのは、3人のAdobeのスタッフが機能面で優れていると思われる自分たちのテクノロジについて顧客へ向かって話しているような内容です。議論としてはAdobeがSilverlightの存在を意識し始めたということ以外なにも価値のないものになっています。
Jespers 氏はこう返す「強調しておきたいのですが、私はこの議論を「こっちのコミュニティの方が大きいぞ」というとこから始めたのではありません。それはこの記事で触れていることではありません!コミュニティの大きさについて書いているのは3つのコメントだけです。それにこれも言っておきたいのですが、私は Silverlightの良い点についても書いているんですよ!」
AdobeとMicrosoftの双方の人が話に参加したところで、Joe Nismet氏はテクノロジの進化の性質をまとめたような考えをコメントしている。
私はAdobeで働いていません。Microsoftでも働いていません。Borlandでも働いていません。Oracleでも働いていません。どのような競合メーカでも働いていません。私は一介のディベロッパです。結局のところどっちのテクノロジが残ってどっちが消え去るのか、それを決めるのは私のような人々の選択でしかありません。
原文はこちらです:http://www.infoq.com/news/2008/07/good-bad-ugly-silverlight