ActionScriptフレームワークのGEMVC(リンク)は、ジョンソン宇宙センターにおける月着陸船アルタイルのプロジェクトでFlexアプリケーションの開発に採用された。Christopher Dean氏は、GEMVCを作成したソリューション・アーキテクトであると同時に、月着陸船アルタイルのプロジェクト用の拡張情報モデル(extensible information model:XIM)プログラムにおける主任研究員でもある。InfoQではGEMVCの詳細を知るためにDean氏と話した。
Dean氏によれば、GEMVCはモデル・ビュー・コントローラ(MVC)モデルをサポートするActionScriptクラスの集合である。完全に揃えられたフレームワークという訳ではなく、必要な個所だけを選んで使うことが出来る。GEMVCはモデル、コントローラのフレームワーク、そしてサービス/ゲートウェイのレイヤから成る。ビューはFlexのMXMLファイルそのものである。
なぜ既存のフレームワークを採用しなかったのかをDean氏に質問したところ以下の回答を得た。
Adobe Labsで初めてCairngormを目にしたとき、既に私はサービス・レイヤの作成を終えていました。そしてその実装を修正したくはありませんでした。その機能に満足していたからです。そこで、その周りにMVCフレームワークを作ることにしました。さらに、Cairngormでは、中心となる一つのコントローラしか持たず全てがシングルトンで扱われるので一つのモデルに一つのコントローラしか許されないという点があまり好きではありませんでした。私はコードをモジュール化するのがとても好きです。ですから、私はアプリケーションの異なる部分用にコントローラを分割できるようにしました。理論上、それぞれのFlexコンポーネントが固有のコントローラを持つことが出来るのです。結局のところ、これはスタイルの問題に過ぎませんが。
Dean氏はGEMVCとCairngormのように既に定着しているフレームワークとの最大の違いを以下のように説明した。
GEMVCフレームワークでは独自の機構を使わず、Flex自身のディスパッチ機構を使っています。私はこのやり方が好きです。というのもイベントの実行に際していろいろの方法をとることが出来るからです。Cairngormでは全ての変更はモデルを通して行わなければなりません。たいていの場合はこれで十分です。しかし、あるイベントの結果としてアプリケーションを制御したり、既存のコンポーネントのActionScriptで作られたメソッドを実行したいと思うこともあるでしょう。GEMVCでは(扱いにくい)コンポーネントへのフルパスを知らなくても、これを簡単に実現することが出来るのです。そのイベントを処理するコンポーネントのIDさえ知っていればいいのです。
Dean氏によると、上述した月着陸船アルタイルのプログラムに加えて地球外物質研究探査室(Astromaterials Research and Exploration Science Directorate)によるスターダスト(Stardust)プロジェクトでも使われるとのことだった。そのプログラムは宇宙探測機スターダストが持ち帰った全てのサンプルを管理するとのことである。
将来についてDean氏は以下のように語った。
この先のことについてriaforgeのブログにはいろいろなアイディアがどんどん書き込まれています。ただ、私は近いうちにGEMVCで実現される機能が3つあるということは言えます。
- サービス・レイヤでのProducer/Consumer機能のサポート。これは既に完成していてすぐにでも公開できるでしょう。
- MXMLファイルでコントローラを特定するのに外部のActionScirptファイルの代わりにMXMLを使えるようになる。これは単にやり方の問題ですが、ActionScriptよりもMXMLの方に馴染んでいる人達もいます。
- コントローラの階層を改善する。現在、あるコンポーネントのコントローラがイベントの一部だけを処理して残りの処理を上位のコントローラに伝播することは出来ません。この機能がXIMプロジェクで話題に上っているので実際に取り組まれたら、より簡単に実装できるでしょう。イベントではなくコントローラがイベント自体を扱えるようにすることも議論されています。
原文はこちらです:http://www.infoq.com/news/2008/12/gemvc-framework-lunar-lander