AxumはMicrosoftのインキュベーション言語プロジェクトであり、分離やアクター、メッセージパッシングを通じて.NETに並列プログラミングモデルを提供するものだ。以前はMaestroと呼ばれていた。この言語はErlangから多くの概念を借り受けているが、C#風の構文を使ってい る。
AxumはC#風の構文を持った命令型言語である。オブジェクトについては知っているがクラスは定義できない。というのも、この言語はオブジェクト指向ではなくドメイン指向、アクター指向だからだ。AxumはMicrosoft RoboticsのConcurrency and Coordination Runtime (CCR)(リンク)をベースに作られているが、同時並行性のタスクをこなすための汎用言語になることを目的としてはいない。狙いは他の.NET言語から並行性が必要なときにAxumコードを呼ぶ出せるようにすることだ。
状態の共有は並列処理にとって大きな障害と考えられている。Axumで状態を共有するには、一方がそれを使っていることを宣言する必要がある。そしてランタイムが格納されているデータへアクセスするためのシリアライズ処理を制御する。同時並行性は完全に言語に組み込まれている。
Axumにおける重要な概念はドメインだ。ドメインとはリソースのリポジトリであり、データやエージェント、関数の集合である。ドメインは互いに分離されており、それぞれのデータや共有された状態を保護する。状態は同一のドメインのエージェントによって共有することができる。ドメインの関数はいわゆる純粋な関数であり、呼び出し間で状態を保持しない。ドメインの中では、エージェントがチャネルを通じて互いにメッセージを交換している。スキーマは互いに関連を持たないエージェント間のコミュニケーションを助けるために導入されたもので、適切なやりとりをするためにある種のメタデータを必要とする。
エージェントは基本的に他のエージェントとやりとりできるスレッドであり、共有された状態へのアクセスは次のようにreader/writerの宣言を追加することで制御する。
domain A {
int i;
int func(int k){}
writer agent X: Channel1 {}
reader agent Y: Channel2{}
}
domain B {
int j;
agent Z: Channel1 {}
}
このドメインエージェント間のやりとりを図式化すると次のようになる。
MicrosoftからAxumの計画について公式発表はないものの、Axumチームは製品化の準備を始めているようだ(リンク)。文書化の課題がまだあるものの、残課題はVisual Studioとの統合を完璧にしてMSIパッケージを作ることだ。