自己組織化とは、組織の内部組成が外的要因に導かれることも管理されることもなく複雑さを増す現象と定義される。この自己組織化はアジャイルなチームにとっての本質的な属性とみなされるが、自己組織化を成功させるためにはチームメンバからだけではなく、マネージャや組織環境からも多大なサポートを受ける必要がある。チームが自己組織化へと向かうのを助けるためには、適正な水準までマネージャが関与することが求められるのだ。
Esther Derby氏が示唆するところによれば、自己組織化へと向かうほとんどのチームに対し、マネージャが関与する仕方としては次の両極端があるという。
- ヘリコプタ・マネージャ – 助けに入るのが早過ぎるためにチームが一緒に考え、問題を解決する機会を奪ってしまう。
- 不在のマネージャ – チームが問題に取り組むのに必要なスキルを全て持っているかどうかに関わらず、一切関与しない。
Derby氏は自己組織化したチーム作りを成功させるために、次のガイドラインを提案している。
- チームが問題を解決するのに十分なスキルを持っているならば、そっとしておくか、もしくは袋小路から抜け出す助けになるような質問をせよ。このことが最終的にスキルを育てる助けになるだろう。
- 時間が本質的に重要でない場合には、チームが問題に取り組む猶予を与えよ。このことがチーム内の感情と協調をより良いものにするだろう。
- 解決の余地がスコープにおいても影響度においても限られていたり、意思決定のやり直しができるならば、チームに問題を解決する余地を与えよ。最初に間違える可能性が高かったとしてもそうするべきだ。
氏はさらに次のように付け加えている。
その場の対応と学習機会との間には常にトレードオフの関係があります。自己組織化したチームはマネージャを凌ぐ可能性があるのですから、そうなるように仕向けなさい。・・・ただしマネージャが好んでバランスを取る役にまわることができる時だけです。
同様に、Dave Nicolette氏も効率的な自己組織化したチームを育てるために次の要素を提示している。
- 責任範囲を明確に定義せよ – そうしないとチームはどこまで自分たちで管理し、どこからマネージャの助けを求めなければいけないのか分からなくなってしまう。責任範囲を定義しないと、チームは必要以上に慎重になり、許可を得ないと何も決定しなくなってしまう。
- ミスを許容し、学習する時間を与えよ – マネージャは最初に問題が発覚したところで手を出してはいけない。自分たちの過ちから学び、自分たちでそれを是正するための行動を起こす機会をチームに与えよ。
- チームを努力が必要な状態にせよ。ただし不満を与えないように – マネージャはチームのスキルレベルと限界について意識しておかなければならない。チームが学習し成長する状態を保てるよう、常にチャレンジする対象を与えることができなければならない。
少し前に自己管理ができるチームの成功モデルについての研究が行われたが、そこで強調されていたのはマネージャがチームに対してバランスを保って関与することだった。適正なバランスによって、チームは意思決定能力と問題解決能力を伸ばすことができる。
このように、重要なのは、自己組織化へと向かうチームの周りに何らかの構造を作ることであり、マネージャがチームのスキルレベルを意識し、手を出す時とそうでない時を正しく見極めた上で、チームが自己組織化へ至るための触媒としてふるまうことなのだ。