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スピードアップのためのスローダウン

原文(投稿日:2009/7/21)へのリンク

チームが最も生産的なのは,そのチームのメンバが能力を最大限に発揮して活動している時である,と普通は考えられている。この常識に反してSteve Bockman 氏は,このような仮定が常に正しいとは限らない,ということを言っている。生産性と収益性を向上させるために時にはスローダウンし,最大限の能力以下で働くことが必要である,というのだ。

氏は2つのチームを対象に行ったある作業実験について論じている。その作業は次のようなステップからなっている。

  • 作業1ー材料(1枚の紙)をストックから取り出す。
  • 作業2-縦方向内側に2つ折にして開く。
  • 作業3-上端2つの角を内側に折る。
  • 作業4-両側面を内側に折り,2つ折にしてから翼部分を折り曲げる。

これを一方のチームは最大限の能力で作業し,もう一方のチームには一番遅い作業にペースを合わせてスローダウンするように指示をした。

どちらのチームも,5分以内に同数の紙飛行機を作ることができた。しかし最大能力で作業したチームは,一番遅い作業のペースで作業したチームに比べて作業途中の仕掛品が残ることによる損失が著しく大きかった。対して2番目のチームには仕掛品は発生せず,結果として材料や作業量を節約することができた。

ここで氏は,ビジネス小説の The Goal について言及している。この小説では生産性向上のためのプロセスが紹介されている。要点は次のようなものだ。

  • ステップ1 - システムのボトルネックを見つける。
  • ステップ2 - ボトルネック部分を最大限に稼動させる方法を決定する (例:ボトルネック部分に空き時間を発生させない)
  • ステップ3 - 他のすべての部分が,上の決定に従うようにする (例:上流作業を減速する)
  • ステップ4 - システムのボトルネックの生産性を向上する (例:遅い作業をスピードアップする)
  • ステップ5 - 前のステップでボトルネックが解消された(つまりボトルネックではなくなった)ならばステップ1に戻る。

このように同書ではボトルネックのスピードアップよりも先に,ボトルネック以外の全作業をスローダウンすることを推奨している。

Steve Bockman氏はこの推奨と先の実験結果を,ソフトウェア開発プロセスに当てはめて説明している。ソフトウェア開発プロセスとは,突き詰めれば創造と知識の共有なのであって,その利益性向上のために氏は次のような方針(mantra)を提案する。

  • 知識はソフトウェア開発における在庫である。
  • 人々は知識を各々の速度で消費する。
  • 消費される以上の速さで知識を生産することは過剰在庫につながる。
  • 過剰在庫は利益を圧迫する。

上記に基づけば,他部分より低いレベルで稼動するボトルネックがシステム内に存在する場合には,最大能力で作業することは有益ではない,と結論付けられる。ここで鍵となるのはボトルネック部分と同じ生産能力を維持すること,そしてまずボトルネック部分を最大能力に近づけるようにスピードアップを図ること,の2つである。それらが結果的に仕掛品を減少させ,ひいては健全かつ高収益な収支をもたらすものとなるのだ。

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