Delphi Prism 2010は、Delphi言語との互換性の改善、AOP、動的型付けのサポートといった主要な新機能や、Range列挙型、読み取り専用クラス、配列における負の添字の下限のサポートなどのその他の新機能を提供する。
Delphi Prism 2010は、Delphi開発者が.NETアプリケーションを開発するためのEmbarcadero社のソリューションだ。Delphi Prismを実行するには、.NET Framework 3.5もしくは4.0を必要とするが、.NET 1.1以降の任意のバージョンのアセンブリを生成可能だ。PCにVisual Studio 2008 Professionalが既にインストール済みなのであれば、PrismのインストーラはPrismをVisual Studioに組み込む形でインストールを行う。VS 2010との連携は、まだサポートされていないが、VS 2010がリリースされたタイミング、もしくは直後にサポートすることになるだろう。もしVS 2008がインストールされていなければ、Delphi PrismはVS Shellをインストールし、その中で実行される。VS Shellは、言語のプラグインを持たないVS IDEだ。
Delphi Prismのアプリケーションは、Windows上の.NET、もしくはLinux、Mac上のMonoなどをターゲットにしているが、VCL.NETは以前より非推奨になっており、Prismでは利用できない。VCL.NETのアプリケーションは、Delphi 2010でも引き続き開発が続けられるWin32用のVCLに移植可能だ。Delphi言語とOxygene言語は非常に似ているが、100%の互換性があるわけではない。いくつかの変更を行えば、2つの環境間でアプリケーションの移植は可能だ。
Delphi Prism 2010は次のような新機能を含む。
主要なコンパイラの機能
- RemObjects Cirrus: OxygeneのAOP
- RemObjects Cirrus向けの標準Aspectsライブラリ(テクノロジ・プレビューとして出荷)
- Unmanaged Export
- Generic型のVarianceサポート
- Volatileフィールド
- CLSCompliantAttributeのサポートとコンパイラによる警告
- 新しいLINQクエリ式演算子 - Skip、While、Take、Take While
その他のコンパイラの機能
- Unquote式サポート(Cirrusを主にサポート)
- $DELPHICOMPATIBILITY コンパイラ命令とプロジェクトオプション
- 実行時のレンジチェック
- Range列挙型 (例 "type Ten = 1..10;")
- 読み取り専用クラス
- 配列における負の添字の下限のサポート
その他の新機能
- UserDataにおけるOxygeneInterface、OxygenePartial、OxygeneEmptyタグサポートのためのCodeDomの強化
- ビルド前/後のイベント
- リモートマシンでのデバッグオプション
- Monoアセンブリ・リファレンス追加のためのカスタム「リファレンスの追加」ペイン
- Delphi Prismとともにデプロイされる新しいMonobjcテンプレートとMonobjcライブラリ
- 最新のMono 2.4をインストールするための新しくなったセットアップ
- 統合されたセットアップの一部としてInternet Packを追加
- wikiドキュメントのオフラインコピーをベースとした統合されたF1ボタンによるヘルプ表示
- ASP.NET Webプロジェクト向けテンプレートの追加
開発者は、DataSnap 2010クライアント・アプリケーションを開発することもできる。
Delphi Prismのwikiでは、C#でまだ利用可能になっていない言語機能について強調されているが、.NET 4.0で導入される新機能を考えるとこのwikiは現状にそぐわないかもしれない。
- 名前付きのインデックス・プロパティ
- Sets
- 並列処理サポート
Futures
並列ループ - Colon演算子
- インライン・プロパティ・アクセッサ
- クラス・コントラクト
- クラス参照
- "implies"演算子
- "case type of"
- プロパティ通知
- 拡張されたNullable型
- 'for each'ループの改善
- 'locked'指示子
- 2つの演算子による真偽判定
- イテレータのデリゲート
- Emptyメソッド
- 例外フィルタ
- イベントの起動/発行
Delphi PrismはProfessionalとEnterpriseという2つのエディションで提供される。Enterpriseには、InterBaseとBlackfish SQLへの接続機能、DataSnap .NETサポート、5ユーザまでのBlackfish SQLの配布ライセンスが含まれる。