North Scale Solutions は３月２３日，Membase NoSQL データベース ソリューションの リリースを発表 した。これが一連の報道記事 ((MarketWire，TheRegister，GigaOM ) のきっかけになっている。
North Scale の memcached コアチーム メンバ による Membase データベースの開発には，主要なコントリビュータである Zynga と NHN からも技術者が参加している。２社はともに，オンラインゲームとソーシャルネットワークスペースにおける大手企業だ。
その他にアーリーアダプタとして，mig33 (モバイルアプリケーション)と Red Aril (広告)も参画している。
オープンソースプロジェクト Membase.org が，Apache 2.0 ライセンスの下でソースコードを公開している。GitHub にホストされた同プロジェクトのサイトからは，ソースの tar アーカイブ と Linux 用バイナリ が公開ベータ版としてダウンロード入手可能だ。
North Scale は既存の memcached サーバ サポートの拡張として，同社独自の サーバソフトウェア を通じた 商用サポート を提供する。
プレスリリース以外のデータベースに関する技術情報は豊富とは言えない。情報を入手する一番の方法は，ソースコードを見ることかも知れない。
この Membase 開発において最も重要かつ困難だった目標は，"シンプルさ，高速性，柔軟性"，この３つである。
その "シンプルさ" を実現したのが キー・バリュー・ストア形式の採用だ。Membase には (今のところ) クエリ機能は存在しない。また，（フィルタされた TAP インターフェース経由でフックする) プラグイン・アーキテクチャによるエクステンションが実現されている。フルテキスト検索，バックアップ，データウェアハウスのダンプなどの用途で利用できるだろう。その他 (計画中の) 拡張ポイントとしては，特殊なコンテナタイプと "NodeCode" 機能のためのエンジン API データバケットがある。
Membase はそのインストールの簡単さ，単一ノードからクラスタまでの操作性と拡張性，memcached へのリプレースの容易さ(接続プロトコルの互換性) によって，開発と運用の両面で導入障壁の低いものになっている。memcached には各種アプリケーションでキャッシュソリューションとして使用された実績があるが，Membase サーバはフロントエンドで，そのコードベースの一部を直接使用している。
このような互換性のため，memcached 用プログラム言語やフレームワークの多くは Membase でも容易に再利用することができる。また Membase 実行システムを管理する操作画面とプログラム呼び出し用の２種類のインターフェースと，設定可能な警告機能が用意されている。
Membase はリニアにスケールするように設計されている。同一形式のノードの集まりで構成されているため，クラスタの能力を増強するためには単にその数を増やせばよいのだ。ただし，保存データの再配布については通常どおり実行する必要がある。
NoSQL ソリューションである Membase には，予測可能なパフォーマンス，準決定論的な待ち時間（レイテンシ) とスループット，という興味深い特性がある。これを実現しているのは次のものだ
- ホットなデータを，待ち時間の最も低いストレージ技術 (RAM，SSD，ディスク)へ自動的に移動
- 選択可能な書き込み動作 - ( レプリケーション，永続化での) 同期および非同期
- バックチャネルのリバランス [実装予定]
- ロック待ちの少ないマルチスレッド処理
- 可能な限り非同期処理で処理
- 自動的な書き込み重複除外
- 稼動状態クラスタの動的再バランス
- 複数クラスタメンバへのデータコピーと高速フェールオーバーによる高可用性の提供
以下の２図は，North Scale のプレゼンテーションの技術情報スライドからの引用だ。
Alex Popescu 氏は技術情報の不足を指摘した上で，Gear6 の Memcached ソリューション について言及している。同社は最近，サーバ用のフラッシュメモリ設備に多くの提供実績を持つ Violin Memory によって買収された。