スクラムマスターには技術的なバックグラウンドが必要なのだろうか? 日々の業務において、コードを読んで開発者をコーチできる必要があるのだろうか?
John Goodsen氏は、コードの書けないスクラムマスターはほとんど役に立たないと考えている。彼は「すぐれたコーチなら自分がコーチしているゲームをプレイできなくてはならない。一度も自分でゲームをプレイしたことがない偉大なスポーツコーチをどれだけ知っているだろうか?」 John氏の考え方によると、すぐれたスクラムマスターはコードレベルでのコーチのやり方を知っており、ソフトウェアを作った経験がある必要がある。
Alan Dayley氏は、スクラムマスターはチームのコーチであって、チームのメンバではないと言う。スクラムマスターの目標はチームがよくなるよう手助けすることであり、それには技術的な知識が必要になる場合もある。しかしながら、深い技術的な知識は逆にマイナスになる可能性もある。スクラムマスターが詳細に没頭してしまい、チームのニーズを見失うおそれがあるためだ。
Mark Woyna氏はこう指摘する。チームには技術的プラクティスを自ら改善する責任がある。スクラムマスターの役割はむしろ、チームがプロセスに従うのを手助けすることにある。
Adam Sroka氏はスクラムマスターの役割を疑問視しているようだ。スクラムマスターが組織的な障害を取り除くのに効果的であるなら、彼らは非常に役に立つだろう。しかし、多くのスクラムマスターはそうは見えない。結局、Adam氏によると、スクラムマスターが役に立たない2つのケースがあると言う。
- チームがハイパフォーマンスで自己組織化しており、スクラムマスターがさらなる付加価値を与えられないとき。この場合、自分たちにはもはやスクラムマスターは必要ないのだとチームは気付いてほしいと彼は考えている。
- チームの行く手を妨げている障害が、スクラムマスターによって取り除ける域を超えているとき。この場合、スクラムマスターは自らをコーチする必要があると彼は考えている。助けを求めるためのコーチングやトレーニング、サポートなどだ。
彼はこう続ける。
もしスクラムマスターが取り除ける障害がチームに存在するのなら、スクラムマスターは必ずしも技術的な面で役に立つ必要はありません。ただし、新しくアジャイルを導入するチームには技術的なアドバイザーが必要になります。なぜなら、小さく素早くインクリメンタルに仕事をすることは、技術と密接な関係があるためです。
技術のわかるコーチはアジャイルの導入を成功させる上で重要ですが、その他の様々な専門知識も役に立ちます。経験豊富なスクラムマスターは、最大限の効果を得るために努力を傾けるべき機会をとらえるのに役立つでしょう。そのためには、スクラムマスターは特定の分野について熟知している必要はありません。ただし、能力のあるリーダー(「マネージャ」と言わなかったことに注意)であることは不可欠です。
Hariprakash Agrawa氏は、スクラムマスターのテクニカルスキルの重要性はチームのアジャイル導入の進捗状況に関係があると言う。チームが不慣れであればあるほど、チームの抱えている障害は本質的には技術的である可能性が高い。この場合には、技術のわかるスクラムマスターの方が望ましいと彼は言っている。ただし、この場合でさえ、ピープルスキルの方が技術的な知識よりも重要だと考えている。たとえテクニカルスキルがあっても不適切な人であれば、チームに大きなダメージを与えるためだ。