Interarbor SolutionsのプリンシパルアナリストであるDana Gardner氏が司会するラウンドテーブルは次の宣言によって幕を開けた。
EAの必要性は以前よりも切迫しています。しかし、EAを専門職にする努力が必ずしも、EAの信頼性を向上し、EAが採用されやすくなるわけではありません。
このラウンドテーブルの参加者は、MITの情報システム研究センターの主任研究者兼ディレクターであるJeanne Ross氏、Integritas Solutionsのアーキテクチャプラクティスプリンシパルであり、Open Group Architecture Forumの議長も務めるDave Hornford氏だ。そして、このOpen GroupのSkills and Capabilities部門のバイスプレジデントであるLen Fehskens氏が詳しく説明したのは、
... ITの不思議なアートから工学的な科学へのシフトと、ビジネスアーキテクチャと増大するビジネスの俊敏性の概念が導く、二度と無い機会と向かいあう方法についてです。
Len Fehskens氏によれば、EAは現在、法律や薬学の専門職のような成熟した職業の200-300年前と同じ位置にいる。つまり、認証制度もなく、EAの知識自体が高度に属人的な状態だ。
私たちの活動は弁護士の活動と似たような状態です。弁護士は彼らしか持っていない秘密の方法に基づいて仕事を得ます。この方法によって顧客は裁判の前に公平な機会を得ます。また、"病院へ来なさい。この特別な治療の方法を知っているのは我々医師だけなのですから。"と言うような医師とも似ています。
Both Ross氏とDave Hornford氏は、現在のアーキテクトの報酬はとても高いという考えに賛同している。デジタル経済の中では、ITはより戦略的になり、適切なアーキテクチャは企業の戦略を簡単に変更する可能性がある。Both Ross氏は下記のように続ける。
アーキテクトの役割はビジョンがあるということを確実にすることです。... したがって、交渉やビジョンの植え付けはアーキテクトの役割のひとつになります。つまり、アーキテクトの役割は単なる技術を超えるものになります。... 組織の長期的な目標を策定する技法があります。... このような手法も技術革新に関わると感じています。...
Dave Hornford氏は成功するアーキテクトはビジネス価値に注力しているということを述べ、さらに詳しく説明する。氏によれば、組織によって価値を定義する方法は異なるが、
... ビジネスが達成しようとしていることはすべての価値の基礎です。ビジョンはどんなもので目標は何なのか。アーキテクトとして実際に働く人は最終的な状態がどんなものなのか、なにが事業を変革するのか明確にする必要があります。また、目的へ向かうために企業のデジタル資産が実際にはどのような役割を果たすのかも明確にしなければなりません。これは競合相手よりも効率的に目的へ向かうためです。
氏の考えでは、成功するEAになる基本的な要件は、なんの手がかりも持っていない状況でも指揮がとれる能力だ。
優れたリータシップを持っていないのなら、その他の能力は基本的には関係ありません。指揮をとること、指揮をとるリスクを負うことを避ける人には変化は引き起こせません。EAにとって障壁となることのひとつは多くのアーキテクトがリスクを負う準備をしていないということです。
アーキテクチャの価値ある提案についての議論を続けるなかで、Len Fehskens氏は下記のように警告している。
ある特定の状況での特定のアーキテクトの権威の根源は、アーキテクチャ一般について説得力があり価値がある提案をする能力です。技術的なバックグランドを持っているアーキテクトの最大の問題のひとつは、機能や挙動について説明はするのにその価値や利益については決して話をしないことです。
アーキテクトが責任を負うのは、
... どんなものであれ設計したものが目的に合致していることを保証することです。問題を解決するため設計方法を扱うアーキテクトの手法は、短期的な敏捷性やコストカットに注力するものではありません。そのような手法は初期の設計の目的に組み込まれるだけです。
Both Ross氏は、説得力のあるビジネス価値をすぐに提供できることは稀だが、作業を勧めていけば実現できると指摘している。
ビジネス価値の提供は一度に一歩ずつ進んでいきます。ひとつの作業が終わったら、ITが組織の作業にどのように貢献しているかを見せて、さらに新たなる価値を提供するべく作業をおこなう、この繰り返しです。このように進んでいくのは自然な遷移です。多くの組織が"今までよりもっと素早い組織になったぞ"と言っていると思いますが、このような発言が生まれるのは、素早く動けるようになったというよりも、日増しに作業が良くなっている状態を維持できているからです。
Dana Gardner氏は一連の議論を下記のように要約した。
アーキテクトが提供すべきことの本質を振り返ることは、ビジネス価値が何なのか、顧客のどんな点に価値を提供すればいいのかを理解することです。
エンタープライズアーキテクトの役割は何度も変わり続けている。12年前はアーキテクトについて正確に知っていた人はほとんどいなかった。しかし、今日では多くの企業がエンタープライズアーキテクチャを企業活動の基幹部分であると考えている。アーキテクトの役割も技術的な責務を(優れたエンジニアとして)負うことから、ビジネスアーキテクチャを考え、リーダシップを発揮することに変化している。これは劇的な変化だ。アーキテクトという職業の役割は今後も変化し続ける。最終的にどのような道になるのか、今の時点ではわからない。