Microsoft は 昨日の SxSW カンファレンスで，同社の主力インターネットブラウザとなる IE 9 をリリースした。これによって IE は HTML5 の一定レベルのサポートを備え，Acid 3 テスト 95% パスを達成することになり，最新の Web ブラウザたちに肩を並べる。
IE 9 で最も注目すべき特徴は，そのスピードだ。バックグラウンドスレッドによる JavaScript の JIT コンパイルと，ハードウェアアクセラレーションによって，前バージョンよりもパフォーマンスが大幅に向上している。その他に Window 7 でのユーザインタフェース更新への対応として，ショートカットバーからWeb ページへのクイックリンクを可能にする“サイトの固定 (pinned sites)” などがある。
HTML History API などの HTML5 機能の追加によって，hashbang シンタックスを利用しなくても，よりユーザフレンドリな Web サイトあるいはアプリケーションの記述が可能となる。hashbang は gawker などのサイトが Google のキャッシュから消失したとき，冷笑の的となっていた。
video タグもサポートされている。初期状態ではハードウェアアクセラレーションによる H.264 デコードがサポートされているが，必要に応じて WebM/VP8 プラグインを追加 などすれば，他のコーデックもデコード可能になる。また Chrome book からの拝借で，個々のタブが 互いに分離 されている。クラッシュを引き起こすようなサイトでも，これによってよりよいエクスペリエンスが実現される。
HTML5 アプリケーション構築を検討中の開発者にとって，IE9 の提供する新機能は評価に値するものだろう。サポート対象が Windows Vista と Windows 7 に限られてはいるが，今回のリリースが IE6 や IE7 など，旧式 IE の終了への開始点となる可能性は極めて高い。初期パッチセットが２,３程度リリースされるまでは，IE 9 が企業で広く採用されることはないだろうが， ブラウジングプラットフォームとしての IE にとって，これはよい方向へ進むための出発点だ。