Hypertext Transfer Protocol (HTTP) に 1999 年の初回以来となるメジャーアップデートが実施された。階層構造(Hierarchies),テキストメニュー・インターフェース,認証機能のサポート向上などに加えて,新たなヘッダ定義や拡張機構も導入されている。
HTTP は 1990 年から使用されている。HTTP/0.9 と呼ばれた最初のバージョンは,インターネット上で生データを転送するためのごく単純なプロトコルだった。RFC 1945 として定義された HTTP/1.0 で MIME タイプのメッセージ形式を許容するプロトコル改訂が実施され,転送データのメタ情報や要求/応答方式の修飾子を収容できるようになったが,階層プロキシやキャッシング,永続的接続の必要性,あるいは仮想ホストなどは考慮されていなかった。その後,RFC 2616 に定義されたバージョン 1.1 でそれらの問題に対処したものの,1999 年以来使用されているその内容には,いく分の古めかしさも見え始めている。
今回の HTTP バージョン1.2では,リソース階層やテキストメニュー・インターフェースのサポートが大幅に強化され,モバイルクライアントのようなコンピューティング環境に適したものになった。また設計目標のひとつとして,外部的な機能構成は,参照専用マウントの可能なグローバルネットワークファイルシステムに非常に似かよったものになっている。この最新バージョンをサポートするシステムは階層的かつハイパーリンク可能なメニューで構成され,サーバの管理者が各メニューの項目とタイトルの選択をコントロールする。
これら新機能のいくつかは,かって Gopher プロトコルで実現されていたものである。Gopher は WWW の前身として,メニュー・ドキュメント設計を強く指向していたプロトコルだ。
その他の改良点として,
- DNS 使用方法が改善された。HTTP 1.2 では SRV レコードを利用してロードバランシング動作を改善するとともに,Web と Eメールの双方でそのドメインを使用する。
- 認証が改善された。ベーシックおよびダイジェストのアクセス認証が改良され,フォームベース認証よりもネイティブに近いエクスペリエンスをブラウザ上に提供する。
- 仕様が変更され,新たなヘッダ定義が追加された。さらに従来の方針が覆されて,仕様に準拠するサーバは,有効なヘッダ一覧に含まれないヘッダをリジェクトするようになる。
- IETF の Web サイトを通じて,新たなヘッダが追加可能になる。ただしこれには,管理コストの負担分としていくらかの料金を要する。
機能の確実な実装を保証するため,HTTP 1.2 には HTTP/1.1 の時よりも厳格な要件が盛り込まれる。
IETF の主要な技術者のひとりである Richard Astley 氏が,今回の開発成果に関するコメントを寄せている。
私たちはこの HTTP の新バージョンが,バージョン 1.1 との後方互換性を十分に確保しつつ,WWW が現在持つ課題への挑戦に成功している,と確信しています。結論として,この仕様はすべての人々 – ユーザ,開発者,実装者,に対して有益なのです。
HTTP 1.2 に関するより詳細な情報は IETF のサイトで確認可能だ。
Dionysios G. Synodios 氏は Web 技術者およびフリーランスのコンサルタントとして,Web 技術に特に注目している。