Oracle は 意外なことに,Sun Microsystems から受け継いだドキュメント処理スイートである OpenOffice を Apach 財団に移行すると発表した。これは同時に,既存の OpenOffice コードのライセンスを LGPL から Apache ライセンスに変更する,ということでもある。
Apache 財団は インキュベーションに関するブログ記事で,プロジェクトのインキュベートを法律面,財政面,さらにはインフラ面でサポートする上で,同財団の構成が非常に適したものだ,という声明を発表した。さらに,オープンソースプロジェクトの トップ10のうち5つ が Apache プロジェクトである点にも言及している。
今回の行動は半年ほど前に OpenOffice から分離,独立した LibreOffice を巡って長引く分裂問題に端を発するものだ。LibreOffice のコードを管理する Document Foundation は,Oracle によって OpenOffice 開発が中断されるのではないか,あるいは OpenSolaris と同様な方法で制限されるのではないか,という懸念を元に設立された団体だ。
この時の分裂を理由として,さらにはコミュニティが OpenOffice よりも LibreOffice を支持したという事実を受けて,Oracle は OpenOffice プロジェクトを終了 すると発表していた。
今回 Apache インキュベータへの移行が提案されたことによって,Oracle の管理下を離れた OpenOffice に新たな関心が集まるとともに,他企業の参画も活発になる可能性がある。中でも Apache 財団との関係が長く,オフィスツールにも以前から関心を持っていた IBM は,新たな場所での コントリビューションの意向 を表明している。
ただし Apache でインキュベータのステータスにあるプロジェクトには,昇格のために (そしてプロジェクトを継続するために) コミュニティの機運の高さと開発の継続を証明することが要求される。元々 Oracle は開発を中止する予定であったこと,同社のコミュニティに対する関心がごく低いものであること,この2点を考慮すると,OpenOffice が新たなライセンス制度と場所の下で果たして成功するかどうか,目の離せない状況が続くことには変わりない。
Oracle の Apache 財団とのこれまでの関係は,良好なものとは言えない。最近では Apache Harmony を巡る議論に関連して,同財団に召喚状を送付している。Oracle は Apache Harmony に対して,同財団との法的合意を理由に TCK(Technology Compatibility Kit / テクノロジ互換性キット) の提供を拒否しているのだ。
Joda Time フレームワークの生みの親である Stephen Colebourne 氏は今回の移行に関して,LibreOffice に間接的なメリットが期待できるかも知れない,と考えている。
今回の移行によって Open Office のコードには,制約の少ない Apache ライセンスが適用されることになります。それによって,間接的ではありますが,現在 Open Office のみで使用されているコードを Libre Office で再利用することが可能になります。仮にそれが唯一のメリットであったとしても,メリットであることには違いありません。
いくつかの領域で – おそらくは Apache ライセンスの下,Libre Office の開発者たちがいくつかの共通ライブラリを不自由なく利用できる,という形で – Open Office と Libre Office が協力し合うことができれば,さらに素晴らしいでしょう。
より詳しい情報は,Apache 財団のインキュベータ wiki にある OpenOfficeProposal で見ることができる。