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Android はどこへ向かうのか?

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原文(投稿日:2011/08/16)へのリンク

Google は Motorola Mobility を125億ドルで買収した。同社が取得済の 17,000 件に加えて,出願中の 7,500 件の特許も入手する。その大部分が通信技術に関するものだ。Android の法的保護が強化される一方,Google がハードウェアメーカとなることで,Android の推進団体である Open Handset Alliance はバランスを失うことになる。Android のパートナーたちが他の OS に移行することはあるだろうか?

Motorola は 2011年1月に Motorola SolutionMotorola Mobility に分社された。Wikipedia によると,決定が下されたのは 2008年3月である。両社の 2011年第2四半期の収益は,Motorola Solution の 20億ドルに対して Motorola Mobility は 33億ドルだった。Google は 2011年8月15日,Motorola Mobility を 125 億ドルで買収すると発表した。これは同社にとって過去最大の買収になる。

今回の買収が Android エコシステムや競合他社に与える影響は大きく,モバイル業界を世界規模で変えることに疑いの余地はない。Google が手にするものは,取得済 17,000 件と出願中 7,500 件の特許だけに留まらない。セットトップボックスとケーブルデバイス市場へ新たに参入することによって,これまでは手の届かなかった,あるいは Google TV の時に成功を収められなかった場所へと,Android のリーチを拡張することにもなるのだ。その一方で Google がハードウェアビジネスに参入することにより,Android の推進団体である Open Handset Alliance (OHA) にアンバランスが生じることへの警告や,あるいは Android ハードウェアメーカとの信頼関係の継続 を疑問視する声も一部で上がっている。携帯電話の販売を開始することで,将来のデバイスに関するハードウェアおよびソフトウェアの仕様を事前に知ることのできる Google は,他のメーカに対してアドバンテージを持つことになるはずだ。いくつかメーカが Android の船から飛び降りるだろう,という考えさえ一部にはある。Nokia は,今回の買収を不満とする Android メーカが Windows へと移行することが "Windows Phone エコシステムを大きく前進させるのではないか",という期待を持っている。

ひとつ確実なのは,当局の規制審査を経て今回の取引が完了したとき,おそらくは 2012 年の春になるだろうが,Google には最低でも 17,000 件に上る通信関連の特許と合わせて,30 年前に最初の無線電話である StarTAC を生み出した,通信ビジネス上最も歴史ある企業のひとつである Motorola が手に入る,ということだ。同社はかねてから,Microsoft や Apple など社歴の長い会社のような,大規模な特許プールを持っていないことに悩まされていた。Android メーカたちは,特許侵害の申し立てによって続々と法廷に引き出されている。その最も顕著な例が,Apple の要求を受けたドイツの裁判所が先日,Samsung 製タブレットの欧州での販売を禁止したことだ。Motorola の特許は,他の携帯電話あるいは OS メーカによる訴訟を終結させる手段を Google に提供するものとして, Android のポジションを確実に強化するだろう。

金融アナリストたちとの電話会議において,簡単な紹介の後にオンラインで公開された,Google の CEO である Larry Page 氏の言葉は次のようなものだった。

Motorola は私たちに,Microsoft,Apple その他の企業による反競争的戦略からAndroid を保護するための,強力な特許ポートフォリオを提供します。

Samsung や Sony Ericsson,HTC,LG,Marvell,ZTE など他のパートナー企業は Android のポジションを強化することへの確信を表明して,Google による今回の買収を歓迎している。その一方で Larry Page 氏はパートナーに対して,Android が今後もオープンプラットフォームであること,Motorola はライセンシのひとつに過ぎないことを保証しようとしていた。しかし Google が将来的に,パートナーたちを犠牲にしてアドバンテージを活用することがあるだろうか? Android メーカは他のプラットフォームへの移行を開始するだろうか?

これから本当に何が起こるのか,それは時間が経てば分かることだ。しかし今の時点では,Android メーカには現実的な選択肢というものが存在しない。Windows Phone へ移行する? 彼らはすでに Windows Phone デバイスを販売している。しかもその販売数は多くない。より正確に言えば,Gartner の調査では 2011 年第2四半期のモバイル OS 市場の 1.6% であり,1年前の Microsoft のシェア 4.9% に比較して低下している。Samsung 独自の OS である Bada でさえ,これよりも大きい 1.9% のシェアを持っているのだ。新バージョン (Mango) によって販売数は増加して,2015 年には 市場シェア 20% に達する (Gartner - 19.5%, IDC - 20.9%) と期待されてはいるが,今の時点において Windows は現実的な解決策にはならない。さらに,もし Microsoft が将来的に RIM あるいは Nokia を買収したら? 同じように Windows エコシステムが混乱しないだろうか?

Android メーカの持つその他の選択肢は,自身のオペレーティングシステムを開発すること,あるいは Android をフォークして,例えば Mozilla などと新たなアライアンスを立ち上げることなどだ。しかしそれには,多くの時間とリソースが必要になる。それに現在の状況と比較して,どれほどのアドバンテージがあるというのか? 今より有利な立場に立てるのだろうか? 新たなモバイルOSを開始するには遅すぎるし,Android をフォークすることにも実質的にメリットはない。Samsung は Bada をプッシュするかも知れないが,果たして顧客が欲しがるだろうか? 事実上,最良の選択は自身のOSを持つことだ。しかし現実に持っていなかったり,あるいはあまり魅力的なものでなかったり,あるいはコストが掛かり過ぎたりしている。手っ取り早い手段は既存のものを利用することだが,すべてハードウェアメーカの手元にあるものばかりだ。唯一の例外は Microsoft の OS だが,同社も Nokia に対して,他の競合会社よりも優位を与える特別な契約を交わしている。

電話会議で Larry Page 氏は,次のように述べている。 "たくさんのハードウェアパートナーが Android の成功に貢献してくれました。彼らすべてと平等に,今後も仕事を続けていきたいと思っています。" モバイルの世界で優位に立つためには強力な Android エコシステムが必要であること,そのためにはすべてのパートナーを Android に集結させ,他のプラットフォームへ逃がさないこと,Google はこれらを理解しているようだ。残る問題は Google がパートナーたちをつなぎ止められるか,あるいは失うか,という点にある。当面においては,特許面での保護状況が好転することで,Android の勢いが加速されることに疑いはない。

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