Intel は MeeGo をあきらめて，HTML5 など新たな Web 技術をベースとするモバイル OS の Tizen を新たに開発することで Samsung と手を結んだ。
MeeGo コミュニティマネージャの Dawn Foster 氏は，Tizen という名称の新たなオープンソースプロジェクトを設立すると発表した。スマートフォン，タブレット，ネットブック，ハンドセット，スマートテレビ，車載情報システムなどに向けた，新たなオペレーティングシステムの開発を目指す。Tizen は Linux Mobile (LiMo) Foundation が運営する Linux ベースの OS になる予定で，Intel と Samsung ２社の主導による Technical Steering Group が管理する。
Tizen が MeeGo の財産をどの程度引き継ぐのかは不明だが，モバイルプラットフォームとその開発を新たに見直すという点からは，HP の webOS と大きな違いはないようだ。Intel Open Source Technology Center のディレクタである Imad Sousou 氏によれば，Tizen は HTML5 など最新 Web 技術への道を歩むことになるという。
そこで疑問が生じます – MeeGo を発展すればよいのではないか，と。しかし私たちは，どちらかと言えば少数のアプリにではなく，HTML5 ベースのアプリケーションにこそ未来があると考えています。投資の対象を HTML5 へシフトすることが必要だと確信しているのです。HTML5 への移行とは，ただ単に Web ランタイムを既存の Linux 上に置く，という意味ではありません。MeeGo のようなモバイル目的の OS でもそれは同じです。また HTML5 を重要視することには，プログラマから API を隠ぺいする意図もあります。そうすれば API にはそれほどの堅牢性は必要なくなりますし，プラットフォーム技術に合わせて API を拡張したり，市場セグメントごとに区別することなども可能になるのです。
ここで言う API には，Foster 氏によれば "メッセージング，マルチメディア，カメラ，ネットワーク，ソーシャルメディアなど，さまざまなプラットフォーム機能を含んでいます"。 OS，ツール，インターフェースなど，開発スタックはすべて公開される予定である。
Tizen はさらに WAC (Wholesale Applications Community) にも依存している。WAC は複数のデバイスあるいはネットワーク対象のアプリケーション開発を容易にすることで，開発者を援助する目的を持った団体である。WAC は多数の携帯電話ネットワーク事業者やメーカから構成されていて，メンバとしては ATT，T-Mobile，NTT Docomo，Orange，Vordafone，オブザーバとしては Erricson，Huawei，Intel，Nokia，Samsung などの企業が参加している。
MeeGo コミュニティは今後，数カ月を費やして Tizen に移行する予定である。新 OS の最初のリリースは，NDK (Native Development Kit) を含む SDK とともに 2012 年第１四半期に計画されている。
Tizen の発表は，Nokia の最初で唯一の MeeGo スマートフォンとなる N9 発売開始の直後だった。MeeGo は Intel と Nokia がそれぞれ Moblin と Maemo を持ち寄り，2010年2月の Mobile World Congress で発表した共同開発プロジェクトの成果である。その間には多くのことが起こった。Nokia は Windows Phone プラットフォームを採用して Microsoft 陣営に舵を切った。また Google は Motorola を買収して，OS 開発者であると同時に Android 市場で競合するデバイス製造者となった。今度は Intel が MeeGo を捨てて，現時点では重要な Android 製造者である Samsung と手を組み，新たな OS を開発してオープンソースコミュニティを引き寄せようとしている。Samsong にとって Tizen の運営担当者とデバイスメーカを兼務することが，Android よりもよい結果をもたらすかどうかは分からない。同社の立場は Android に対する Google の立場に酷似している。ひとつ確実なのは，モバイル市場が非常にダイナミックで，巨大な利益を生み出すマーケットであることだ。