Adobe はモバイルブラウザ用 Flash 開発の中止を決定した。今後はそれに代えて,ネイティブアプリケーションと HTML5 用ツールの開発に注力する。
Adobe は今日 2011年11月9日に金融アナリスト会議 (Financial Analyst Meeting) を開催して,今後の同社の戦略を説明する予定である。戦略上の要点について概説した プレスリリース では,Dreamweaver, Edge, PhoneGap を通じた HTML5 開発へのリソース移行に加えて,Flash に関する計画の修正について言及している。
ゲームや高品質ビデオなど最先端の PC Web エクスペリエンスに加えて,モバイルアプリ提供のために Flash のリソースを集中します。
この変更が Flash にとってどのような意味を持つのか,プレスリリースから明確には分からない。しかし ZDNet の伝えるところでは,Adobe のモバイルプラットフォーム用 Flash 開発の中止 について,パートナ企業には事前に通知されていたようだ。
モバイルデバイス用 Flash に関する今後の開発は,Flash 開発者が Adobe AIR で開発したネイティブアプリを,主要な App Store 用にパッケージ可能とする作業に集中する予定です。新たなブラウザや OS バージョン,デバイス設定へのモバイルデバイス用 Flash Player の対応は実施しません。ただし一部のソースコードライセンシが開発作業を継続して,独自の実装をリリースする可能性はあります。現行の Android および PlayBook 版の重大なバグフィックスやセキュリティアップデートについては,今後も引き続きサポートします。
Adobe からパートナーへのEメールでは,これに続いてモバイルブラウザ用 Flash の開発を中止すること,代わりにネイティブアプリケーション生成に注力すること,HTML5 への投資を継続することなどが説明されている。
このような Adobe の動きは,かねてから予想されていたものだ。これまでにも Adobe がFlash に関して,何らかの思い切った対策を必要としていることを示す兆候があった。その経緯については,InfoQ の "HTML5 vs. Flash: Adobeの立ち位置はどこか?","Flash と Flexの将来はどうなるのか?" などの記事を参照してほしい。
最初の警告は 2007年,Apple が iPhone に Flash を搭載しなかったことで引き起こされた。Steve Jobs 氏は Flash に対する見解 (Thoughts on Flash) と題した記事で,Flash がスマートフォンのリソースを過剰に消費すること,Adobe の技術開発が遅れていること,などを指摘した。Adobe は 2010年6月になってようやく,Android 用の Flash for Mobile をリリースしたが,過去数年間の極めてダイナミックなスマートフォン市場に対して,追随できていなかったのではないだろうか。
Adobe は現在,2重の戦略を選択しようとしている – ネイティブアプリ,そして HTML5 だ。最近になって同社は,クロスプラットフォームのオープンソースモバイル開発フレームワーク PhoneGap の開発企業である Nitobi を買収した。PhoneGap は HTML と JavaScript からネイティブアプリを生成するので,この買収は同社のネイティブアプリ戦略を補助することになるだろう。しかし HTML5 が勝者か,あるいは少なくとも有力な勢力となった場合に備えて,そちらの市場への足掛かりも確保すべく,HTML5 ツールに対してさらなる投資を行う予定である。
興味深いことに Adobe は北米および欧州を中心に,全従業員数の8%にあたる 750人の常勤職を解雇 することも同時に発表している。