毎年実施されている Eclipse コミュニティサーベイの 2012 版がリリースされた。その結果には 注目すべき点 が多数含まれている。昨年の調査結果 から見え始めていた分散バージョン管理システムの増加は,今回特に Git の大幅な伸びとして顕在化している。
Eclipse のマーケティングディレクタである Ian Skerrett 氏は,次のように 報告書の内容を要約した。
- Git の勢力拡大の継続
- Maven 利用の加速
- Spring と EJB が標準的サーバフレームワークとしての立場を継続する一方で,Equinox と OSGi の採用も増加している。
- モバイルコンピューティング = Android + iOS
- 新技術の習得,プロジェクトの改善に対する開発者のモチベーションは,フリーおよびオープンソフトウェア (FOSS) に対する信頼に支えられている。
- オープンソースに対する企業の意識は,より肯定的なものになっている。
調査データの原本は Excel および OpenOffice ファイル形式で公開されている。主要なポイントを押さえた SlideShare のプレゼンテーション も提供される。
Maven の採用が増えているのは,昨年リリーストレインに加わった M2Eclipse プラグイン や,Maven ベースの PDE ビルド代替プラグインである Tycho にも原因があると考えられる。
また報告書からは,Windows が重要な開発ターゲットであることが確認される。ただし Windows がひとつの選択肢として与えられているのに対して,複数のディストリビューションが Linux 自体への投票を分散させている,という事情もある。
James McKay 氏は Gitを,もはや開発者にとって 軽視することはできない 存在であると認めている。"根っからの Mercurial ファンである私にとってそれは,最終的に Git の勝利を認めざるを得ない,ということなのです。" さらに,
Git の市場シェアは,業界全体で 27.6% に達しています。
これは私が予想したベストケースのシナリオをも越えるものです。私は Git の成長率として,これまでの実績 (一昨年は 6.8%,昨年は 12.8%) に基づき,企業環境にどの程度受け入れられるかによって 16% から 24% 程度の範囲を想定しました。そして私の説が正しければ,この範囲のもっとも低い値になる,と予想していました。25% というのはベストケースにおいて可能なスコアであって,それも極めて難しい値だろうと考えていたのです。
(Mercurial に関するニュースは対照的に,4.6% から 2.6% へのダウンという暗いものです。Subversion は依然としてナンバーワンですが,51% から 46% に下がっています。落ち込みとしては予想より小さいのですが,それがレイトアダプタが CVS から徐々に移行しているのに支えられたものであることは間違いありません。それでも今後 12 ヶ月以内にナンバーワンの地位を失うことは確実でしょう。)
さらに氏は,データ分析に基づいて フォローアップ記事 も書いている。氏はこれを Subversion の終焉だと考えている。
しかしながら,Subversion にとっての凶兆はすでに明らかになっています。現時点では Subversion がもっとも広範に利用されている選択肢であり,過去数年間の減少率は私の予想を下回っています。それでも現在の傾向が継続すれば,1年と経たずに業界全般で Git に取って代わられることでしょう。Subversion は集中型ソース管理という基準から見てもベーシックで簡素なシステムですし,開発ペースも遅いのです。完全な滅亡まで数年を要することは間違いありませんが (信じられるかどうか,現在でも 8% の開発者が CVS を使っているのです),ユーザがその寿命の終わりを計画せざるを得なくなるのは時間の問題です。
何らかの選択バイアスが作用しているにせよ,Eclipse で Git が人気を博していることは事実だ。Eclipse の大部分のレポジトリにも,現在ではすべて Git が使われている。
IDE の選択に関わらず,今回の調査から浮かび上がったデータポイントは,Git が明らかに上昇傾向にあり,その他のバージョン管理システムが下降しているということを示唆している。