2月14日は,GPS(Global Positioning System, 全地球測位システム)が生まれて25年目の誕生日に当たる日だ。サービスが開始されたのは1989年2月14日,最初に打ち上げられたBlock II衛星により,人類の航行歴史上もっとも大きな変化が始まった。
当初は米軍の要請による研究プロジェクトという位置付けだったGPS衛星プロジェクトが開始されたのは1972年だったが,Block Iに最初の10個の試験衛星打ち上げられたのは1978年から1985年の間だ。プロセスの成功が宣言され,商業利用可能なBlock II衛星が1989年から1990年に打ち上げられた。その後はIIAとIIR衛星が,それぞれ1990年~1997年,1997年~2004年の期間に打ち上げられている。
1993年12月には軌道上のGPS衛星の数が24個となり,標準的な測位サービス(非軍事用)が,その2年後には高精度な測位サービス(軍事用)が提供されている。当初の民生用位置情報サービスの精度は数百メートル程度だったが,2000年代初頭になると周波数が追加されて精度が向上し,それまでよりも正確な車載ナビゲーションユニットが提供されるようになった。
GPSナビゲーションは,同期した複数の電波時計を使って,受信信号の差異をもとに地域を算出することで動作する。地球表面の位置を特定するためには3つ,地表より上のロケーションをピンポイントに特定するためには4つ,あるいはそれ以上の信号が必要だ。すべての衛星が同じ軌道上ではないため,軌道歴に対する修正としてのデルタ位置を算出して公開している。この情報は電子的に送信され,位置情報の補正や収集時間の改善に利用される。そして何よりも興味を引きそうなのは,GPSクロックが一般相対性理論のリルタイム試験でもあることだ。もし相対論の影響を考慮した修正を組み入れなければ,GPSの示すロケーションは1日に10km以上も外れてしまう。
初期の搭載型ナビゲーションユニットは巨大で,航空機やコンテナ船などの大規模な輸送設備に取り付けられるものだった。しかし技術の進歩に従って自動車などの小型機に,そしてついには携帯デバイスにまで搭載されるようになった。現在では航空経路の計画や誘導などが,日常的にGPSの支援の下で行われている。さらに空港では航空機の自動着陸さえも,GPSを利用して実現されている。
オンラインサービスにおける地理情報の重要性はますます高まっている。さまざまなGeoIPツールがオンラインで公開されている他,大雑把なフィルタリング(BBCのコンテンツを英国以外に公開するかどうかを決めるような)にも利用されている。位置情報を取得可能なデバイスであることを前提として,ユーザのブラウザの位置情報にアクセスするHTML5のAPIさえ存在する。さらには広域にわたるWiFiアクセスポイントのブロードキャスト位置情報が公開されているので,GPSユニットがなくても数百メートルの範囲で人をピンポイントに特定可能だ。navigator.geolocation.getCurrentPosition()
にコールバックを渡せば,ブラウザの緯度と経度を含む座標情報が精度の見込値とともに返される。
今日ではモバイルスマートフォンの大部分にGPS受信機が搭載されている。わずか数秒の測定によって,ユーザの現在位置を数十メートルの精度で特定することが可能だ。オンボードの電子コンパスと併用すれば,特定の位置からの距離情報だけでなく,そこへ歩くために向かうべき方向さえも決定することができる。地平線の景色が存在する限り,地球上での自分の位置を簡単かつ素早く特定することが可能なのだ。