スプリントのレトロスペクティブは,プロダクトオーナが学び,改善し,開発チームと良好な関係を築く機会のひとつである。Pichler Consultingのオーナであり,"Agile Product Management with Scrum"という著書を持つRoman Pichler氏は,先日のブログ記事で,プロダクトオーナがスプリントのレトロスペクティブに参加することを支持した。
プロダクトオーナであるあなたは,開発チームやスクラムマスタがそうであるように,スクラムチームの一員なのです。プロダクトオーナとして製品に対して責任を持つ一方で,ソフトウェア製品開発の成功については,他のスクラムチームメンバとのコラボレーションに頼ることになります。レトロスペクティブに参加しないのは,彼らとの関係を強化してコラボレーションを改善する機会を無駄にする,ということなのです。
プロダクトオーナはレトロスペクティブに積極的に参加すべきだ,と氏は言う。彼らの作業からのフィードバックの獲得や,改善の必要な問題についてチームと議論する場として,レトロスペクティブを利用するのだ。
氏はプロダクトオーナが,スプリントレトロスペクティブで答を得られそうな疑問例をいくつか挙げた。
- 開発チームと十分な時間を費やしていますか? 質問に対する回答やフィードバックの提供は迅速にできていますか? 適切なレベルのフィードバックやガイダンスを,適切な方法で提供していますか?
- チームとのコミュニケーションはオープンかつ誠実で,信頼できるものですか?
- ユーザがその製品を使用する方法について,チームは知っていますか?
- チームのメンバは,ユーザフィードバックやデータの解析,プロダクトバックログの変更,スプリントのためのストーリの準備に関与することに満足していますか? バックログの”手入れ”について,チームの十分な支持は得られていますか?
- チームのメンバは全体像 – ビジョン全体,プロダクト戦略,プロダクトのロードマップなどを理解していますか? チームのメンバは,あなたのプロダクト計画やプロダクトロードマップ作成を支援するための時間を十分に確保できていますか?
プロダクトオーナとチームとのコラボレーションだけでは不十分だ,と氏は言う。 プロダクトオーナにはマーケット部門やセールス,カスタマサービス,さらには財務といった関係者との強いリレーションシップも必要だ。
マーケティングやセールスなどのパートナとのコラボレーションを見直し,それを改善するためのよい方法は,定例のレトロスペクティブに彼らを招待することです。コラボレーションの密接さに応じて月1回でも,メジャーリリース毎に1回程度でもよいでしょう。このような共同レトロスペクティブは,より緊密な信頼関係の構築,製品の新バージョンのスムーズなローンチ,製品の販売とサービスの改善などに寄与するものになります。
そのような拡張レトロスペクティブによって,プロダクトオーナは次のような疑問について確認することができるだろう,と氏は言う。
- マーケティングやセールスなどの関係者は,製品のプランニングやアクティビティのロードマップといった活動に対して,十分に関与してくれるだろうか?
- 彼らはスプリントのレビューミーティングに,定期的に参加してくれるだろうか? レビューミーティングは彼らにとってメリットがあるのだろうか? プロジェクトの進捗状況を理解してくれるだろうか?
- マーケティングキャンペーンの準備や販売促進用品の作成など,彼らの作業を進める上で必要な情報を,タイムリーに受け取ってくれるだろうか?
- 彼らパートナから,定期的なセールス実績の最新情報や必要なマーケットフィードバックといった,十分なデータとサポートを受け取れるだろうか?
氏のこのような意見に対して,Agile Pain Relief Consultingの創設者兼コンサルタントであるMark Levison氏が見解を表明している。Levison氏はチームとの関係の初期においては,プロダクトオーナは注意を払うように警告する。レトロスペクティブに出席する場合に実行すべき,出席者間のバランスがあるというのだ。
プロダクトオーナもレトロスペクティブに関与すべきだが,プロダクトオーナの設定した目標に達する方法を決めるのは開発チームなのだ。そのことを忘れないように,氏は願っている。