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継続的学習ができる組織になる

原文(投稿日:2014/11/10)へのリンク

ソフトウエア開発は、知識集約型であり、それゆえ、組織は常に学習し続ける方法を探していると考えられている。Marcin Floryan氏は“学習する組織が必要であり、それは学習する個人から生まれる”と言う。しかし、個人の学習は難しく、さらにそれを拡大するのはもっと難しい。継続的な学習ができる組織になるにはどうすればいいのだろうか。

Lean Kanban Central Europe 2014 Conferenceで、Marcin氏は学習のエントロピーの法則について話した。InfoQはこのカンファレンスの模様を記事にする予定。

InfoQはMarcin氏にインタビューし、アジャイルチームや企業にとっての継続的学習の重要性と価値について、学習を拡大する方法について、成功と失敗から学ぶこと、企業の学習能力を増大させる方法について話をした。

InfoQ: 私が知っているほとんどの人は新しいことを学ぶのに熱心です。しかし、実際に新しいことを学ぶのは難しいです。あなたも同じような考えですか。

Marcin: 私がソフトウエア開発が好きな理由のひとつは、学習することが基礎になるからです。私が出会った多くの人がこの点を認識しています。しかし、驚くべきことに、日々の実践の中では、学習は追い出されてしまうのです。それゆえ、学習が困難であることの根本原因は学習方法ではないと思います。むしろ、学習を日々のルーチンの中に位置づけるための規律に原因があるのではないでしょうか。

私は、講演で、聴衆に“学習することに対して給料をもらっている”と思うかどうか質問します。思うと答える人はほとんどいません。もちろん、この質問はある意味では仕組まれています。新しいスキルを獲得したという事実より、既存のスキルのほうを評価して欲しいと思うでしょう。しかし、私はこの質問で内省を促したいのです。

私は参加したソフトウエア開発プロジェクトのすべてで、たくさん知らないことがある状態からスタートし、発見のプロセスを進みました。これが私にとっての学習なのです。ドメインについて学び、要件について学び、技術、人、インフラについて学びます。"スコープは自然とは広まらない。理解が広めるんだ"、とJeff Patton氏が言っていますが、言い得て妙ですね。

InfoQ: 何が継続的学習の価値になると考えていますか。

Marcin: 難しい質問ですね。この点についての考え方は注意する必要があります。私たちは、常に変化し続ける環境で働いています。それゆえに、変化についていくための効果的な方法が必要です。継続的学習とはそのための鍵になるツールのひとつです。しかし、継続的学習それ自体には価値はありません。大量の本を読んで洗練された技術力を身につけたとしても実践に投入しなければ、役に立ちません。継続的学習が無価値であると言っているのではありません。継続的学習は価値ある結果を達成するための方法です。難しくなり続ける問題を解決するための能力、革新的な解決策、ビジネスモデルの進化、デリバリの高速化など、価値ある結果は多岐にわたります。

InfoQ: アジャイルチームにとって、そして、アジャイルを実践したい企業にとって、継続的学習が重要なのはなぜでしょうか。

Marcin: アジャイルマニュフェストは次の宣言から始まっています。"私たちは、ソフトウェア開発の実践、あるいは実践を手助けをする活動を通じて、よりよい開発方法を見つけだそうとしている。” 私にとって、よりよい方法を見つけ出すということは、それが学習に基づいた方法であり、発見の旅は続いているということを明らかにすることです。

“こうすることで価値を手に入れることができる…”ということは確かにそうなのですが、この宣言は過去のある時点で有効であったということ、時間とともにその有効性は色あせているということ、力点を動かす必要があることは認める必要があります。思うに今アジャイルコミュニティが直面しているのはこの点です。私はこの変化、適用、進化がアジャイルチームが取り組むべき本質だと思います。また、このような変化は学習の別の表現だと思います。“分析的”な考え方や、“私たちは既に何がどのように動くか知っており、プロジェクトに必要な技術と経験がある”と仮定する従来の組織の“固定的”な考え方とは大きく異なります。アジャイルを実践することから最大の価値を得るためには、企業は成長のマインドセットに移行する必要があります。つまり、完全な知識が欠けていること、それゆえ、学習が必要であるということを認めるのです。

InfoQ: 学習する組織になるには、個人の学習を拡大する必要がありますが、可能なのでしょうか。

Marcin: この質問は今まで何度か受けたことがありますが、まだ、十分に回答できる状態ではありません。私が学んだ限りでは、Chris Argyris氏とPeter Senge氏の仕事によれば、学習する組織を構築することは可能であるものの、考え方を根本的に変え、新しいアプローチを実践する必要があります。

私は、学習の効果と真の意味を知っている人と始める必要があると思います。次の例は、学習する組織なろうと努力する中での失敗としてChris Argyris氏が提示したものです。"まず、ほとんどの人が学習を狭く捉えており、単なる‘‘問題解決’’だと思っています。それゆえ、外部環境の問題の特定と修正に注力してしまいます。[…] しかし、学習が継続するなら、マネージャも従業員も内部を見なければなりません。自身の振る舞いを内省し、組織の問題に貢献してしまっている点を特定し、振る舞いを変えなければなりません。特に、問題の定義と解決に取り組むこと自体が、どのようにして問題の原因になってしまうのかを理解する必要があります。”

つまり、学習を拡大することはできるし、望ましい。しかし、それをどのように実現するかを探り続けなければならないということです。

InfoQ: 失敗や成功から学ぶこともできます。このふたつに違いはあるのでしょうか。

Marcin: これは大きなトピックで、全く新しい議論になります。従来の考え方とは違い、私は失敗からは何でも学べるとは思っていません。失敗からの学習というのは、失敗に対する体のいい言い訳だと思います。失敗したけれど、最低限そこから学んだので、時間の無駄ではなかったということです。私は“失敗を前にして”学習ができると考えています。こう考えることで、失敗は受け入れられるだけでなく、効率的に学ぶためには歓迎するべきものであるという状況を作り出すことができます。

InfoQ: 学習能力を高めたい組織に何かアドバイスをお願いします。

Marcin: 特定の文脈がないアドバイスを与える場合は、些細なアドバイスにならないか、無関係なアドバイスにならないかと心配になります。いくつかのアドバイスの中から何か役に立つものを見つけてくれれば幸いです。

まず、組織は学習の必要性を認識する必要があります。そうすれば、学習が現在、どのようになされており、効果的な学習の障害は何なのかを把握しようとし続けられます。

学習を明示的にすること、人々に学習体験を与えることが実践できる直接的なステップです。勉強会を開催し、知識と経験を共有します。ブログを解説して、誰もが学習したことを共有できるようにします。カンファレンスやコミュニティのイベントに従業員を送り込み、気づいたこと学んだことを共有させます。実践の時間を与えます。1週間に数時間でもいいでしょう。本を買い、ブッククラブを設立して、読書経験と学習を共有します。これらのことは小さなことですが、興味を生み出し、人々を前へ進めます。もし、学習に特化した小さなコミュニティを作るなら、互いの誠実さを保ち、自分たちの進歩に対して動機付けられている、効果的な仕組みになるでしょう。

しかし、このような優れた実践を行う場合、次のことを念頭においておく必要があります。つまり、学習能力が高まれば、組織は現状への挑戦に準備する必要が出てくるということです。多くの従業員が現状のおかげで価値と地位を確保していたとしたら、どうすればいいのでしょうか。私は、講演のときには手を洗うことをたとえに出します。"センメルヴェイス医師が発見した手洗いというアイディアは既存の医療知識と対立しました。手を洗う必要があるという考えに傷ついた医者もいました。というのは、紳士である医者という社会的地位と手が汚いという考えに矛盾を感じたからです”このような態度を克服することが真の学習を行う上で最も重要な点なのかもしれません。

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