Qtプロジェクトのチーフメンテナを務めるLars Knoll氏が,Qt 5.4のリリースを発表した。Webテクノロジ領域での多数の改良,Windowsランタイム上でのQtのフルサポート,グラフィック操作の新機能,新しいライセンスモデルなどが提供されている。
以下のリストは,新機能および改良点を挙げたものだ。
- Qt WebEngine: Chromeベースのエンジンで,Qt Quickベースのウィジェットあるいはアプリケーションへの,Webコンテントの組み込みに使用する。
- Qt WebChannel: QML/C++とHTML/JavaScript層のブリッジに使用するモジュール。例えば,WebSocket経由でサーバと通信するHTML/JSクライアントの記述が可能になる。
- Qt WebView: 稼働するオペレーティングシステムにネイティブなWebブラウザの組込みを可能にするAPI。WebEngine全体を必要としない場合,あるいはiOSのように,プラットフォームの制限によってそれが不可能な場合に利用できる。
- Qt for WinRT: Windows Phone 8.1およびWindows 8.1用のアプリケーションの記述を可能にする,Windowsランタイムプラットフォームとの統合が完成し,Qtの一部として完全にサポートされるようになった。
- 高DPIディスプレイのサポート: 現在はまだ実験的レベル。
- OpenGL実装の動的選択。これは主として,従来からOpenGLのサポートが“問題含み”であるWindowsにおいて有効な機能で,ネイティブなOpenGLドライバとANGLEのOpenGLES 2.0,あるいは完全なソフトウェアラスタライザから選択することができる。
- Qt Creator 3.3: AndroidおよびiOS用のアプリ開発のためのクロスプラットフォームIDE。
- Qt Data Visualization: ボリュームレンダリングやテクスチャサポートなどの新機能が追加された他,パフォーマンスも向上している。
Qt 5.4にはこの他にも,Bluetooth Low EnergyのLinuxサポート,フラット形式のコントロール,iOSの64ビット版差オートなど,多数の新機能がある。
最後にQt 5.4では,LGPL v3ライセンスへの移行が実施されている。これは“Tivoization”などの誤用を防ぐ方向への1ステップだ。Qt WebEngineなどいくつかのモジュールはこの新ライセンス下でのみ使用可能だが,Qt 5.3に存在したすべてのモジュールについては,引き続きLGPL v2.1下で使うことができる。