スクラムで実行するすべての作業には,チームのプロセスとインタラクションの基本として,いくつかの価値意識が必要である。そのひとつが勇気だ。スクラムでは全員がチームとして活動するので,チームメンバはサポートされていると感じる。これが彼らに,より困難な問題に挑戦する勇気を与えるのだ。
エンタープライズアジャイルのコーチで,プロのスクラムトレーナであるDaniel Sloan氏は,先日の自身のブログで,アジャイル組織における“勇気あるコミュニケータ”の重要性について説明した。その中で氏はリーダに対して,組織内での勇敢なコミュニケーションを促進するべきだ,と述べている。
アジャイル組織の内部には通常,信じ難いほどのリーダシップのダイナミクスが働いている,と氏は言う。重要なダイナミクスのひとつは,経験豊富な指導的立場のメンバが勇気あるコミュニケータをサポートする場面にある。勇気を文化として育むためには,組織のリーダ層が開発の現場において,オープンで率直な行動を支援する必要がある。
勇気は優れたリーダシップのために必要な価値感ですが,仕事の場でそれを発揮するには,熟練したコミュニケーション,感情的な意識,相当のプロフェッショナルな安全意識が必要です。
勇敢なコミュニケーションの重要性を説明するために,氏は,次のような例を挙げている。
ソフトウェア会社が早まって不完全な機能をスマートフォンに提供し,それがユーザであるあなたを悩ませています。アプリケーションの開発者は,品質に問題のあることを知っていたかのかもしれませんが,競合上の不安やユーザへの義務感から,恐らくはマネジメントの圧力を感じて出荷したのでしょう。あるいはもっと悪く,早期に出荷することで開発者に支払われる金銭的なインセンティブだけが理由だったのかもしれません。
勇気あるコミュニケーションがあれば,このような状況を避けることができます。恐らくは誰かが,礼儀と落ち着きを持ってシニアマネジメントのもとに赴き,次のようなことを言うでしょう。
管理アプローチが私たちに,お客様や当社の評判を損ないかねない何かを強いているように思います。この状況は,私たちが相互合意した品質と完全性の基準を満たしていません。“完了”していないものを出荷したならば,いったい何が起きるのでしょう?
生産的で回顧的,そして勇気を持ったコミュニケーションこそが重要だ,と氏は言う。
Platinum Edge Incでトップを務め,“Agile Project Management for Dummies”,“Scrum for Dummies”という著書を持つMark C. Layton氏は,自身のブログで,アジャイルチームにおける優れたコミュニケータの選択について述べている。スクラムマスタを選任するマネジメントは,その候補者が,開発チームを合意に導く上で必要なコミュニケーションと円滑化のスキルを持っているかを見る必要がある,と氏は言う。
そしてDanielは,誰もが勇気あるコミュニケータになることのできる方法を,次のように説明する。
- 自分自身の不安に対して,オープンで正直であること。
- 評価してはいけない。
- 落ち着いて。
- 待ってはいけない。
- 他のメンバの勇気を祝福しよう。
読者であるあなたは,“勇気あるコミュニケータ”だろうか? 勇気が尊重される文化を育てているだろうか?