JetBrainsが発表した,IntelliJやRaShaperなど,同社の主要な開発ツールすべてを対象とした製品ライセンスの変更が,開発者コミュニティの間で激しい議論を巻き起こしている。無期限の製品ライセンスは11月2日以降,JetBrains Toolboxと呼ばれるサブスクリプションベースのサービスに置き換えられる。このToolboxは,月単位または年単位のサブスクリプション契約で使用できる。どの製品でToolboxを構成するかはユーザが選択可能で,それによって課金が決定される仕組みだ。
JetBrainsは今回の変更について,これまでの同社の価格モデルに対する(未公開の)フィードバックに対処するためであり,“すべての人たちにより柔軟なモデルを[提供]”すると同時に,“シンプルで容易に理解できる”ものだ,と説明している。新しいライセンス条件の対象となる製品は,IntelliJ IDEA, AppCode, CLion, PhpStorm, PyCharm, RubyMine, WebStorm, ReSharper, ReSharper C++, dotTrace, dotCover, dotMemoryである。現時点の製品リストをすべて含んだ価格(変更される可能性がある)は,個人開発者向けの19.90ドル/月から,“企業ないし組織”に所属する開発者向けの39.90ドル/月までとなっている。
これらの変更が発表されるや否や,その決定に対する抗議と批判の声が多くの開発者から上がった。製品を購入したくても選択の余地がなく,JetBrainsへの安定した支払の流れが確立することになるからだ。今後JetBrainsのツールを“所有”することはできなくなる。同社は”レンタル”するのみであって,支払が止まれば,それ以降の使用は不可能だ。開発者のDaniel Yankowsky氏は,ライセンスの変更だけではなく,新しいソフトウェアライセンスでは,“[少なくとも]30日毎に ... ソフトウェアが自宅に電話する必要がある”点への懸念を述べている。
Redditのユーザ名“slccsoccer2”は,自身の反対意見をまとめて次のように書いている。
“Jetbrainsは昔から,自社の製品に多くの価値ある機能を追加し続けて,購入する価値のある新バージョンを作り上げてきました。今回の変更によってJetbraisnが,これまでのような自社製品の改良から,時間の経った製品へのサブスクリプション獲得に焦点を変えるのではないかと心配しています。”
ユーザ“mike_hearn”は次のようにコメントしている。
“サブスクリプションによる収入は,ソフトウェア改善へのインセンティブを失わせます。
ユーザがずっと同じ金額を払い続けてくれれば,例えそれが誠意からのものだとしても,サブスクリプションによる利益を別の製品開発で使用したい,という誘惑に抗しがたくなるでしょう。結果としてその収入は,新たな機能開発に使用されます。既存製品のバグ修正が収益に影響することはほとんどないからです。新たなマーケットに販売するための新製品開発に資金を投入した方が,サブスクライブベースの拡大と,総売上高の増加に有効なのです。”
9月8日に行われた最初の発表に対する最新情報として,JetBrainsは,価格と条件に変更の可能性があることを追加した。さらに同社では,多数寄せられたユーザのコメントを"無視することはない"とも述べている。但し,どのような変更を行う予定なのか,あるいは,現在のライセンス体系を放棄するという同社の計画を撤回する意思があるのかなど,詳細はまだ何も分かっていない。