カナダのIHSから来たSean Dunn氏とChris Edwards氏が,バンガロールで開催された2016 Agile India カンファレンス(Todd Little氏の記事)で,“スクラムの7つの罪とアジャイルアンチパターン(7 Sins of Scrum and other Agile Antipatterns)”と題した講演を行なった。
その中で氏らは,組織がアジャイルプラクティスを誤って実践する場合の一般的な方法のいくつかを,“アンチパターン”から生じる結果の例とともに紹介した。
最初に氏らは,アンチパターンの意味を,James Coplien氏のものを引用して,“一見よいアイデアだが実行に移すと痛い目にあう”もの,と定義した。
講演では,シニカルな“中途半端なアジャイルソフトウェア開発のためのマニフェスト(Manifesto for Half-arsed Agile Software Development)”を引用しながら,多くのアジャイル/スクラムの実践が,いかに名前ばかりのリップサービスに過ぎないものかを紹介した。
続いて氏らは,スクラムチームに共通する7つの“罪”と,それらが顕在化した組織に見られる徴候について説明した。その中で氏らは,罪と,罪の結果であるアンチパターンを表現する手段として,アジャイルマニフェスト(Agile Manifesto)の構成を使用した。
紹介された罪とアンチパターンは次のものだ。
- 「個人と対話」よりも「プロセスとツール」
- 「アジリティをサポートするツール」よりも「アジャイルがツールである」
- 「アジャイルは価値観のひとつ」よりも「アジャイルはプロセスのひとつ」
- 「原則と価値」よりも「ベストプラクティス」
- 「コンテキスト」よりも「すべてにフィットするワンサイズ」
- 「所有権の共有」よりも「コラボレーション」
- 「価値の流れ(Flow of Value)」よりも「現状(Status)」
- 「価値の提供」よりも「進捗状況」
- 「学びと適応」よりも「チェックボックス」
- 「チームの作業の完了」よりも「私の仕事の完了」
- 「完了」よりも「開始」
- 「チームのスループット」よりも「個人の使い勝手」
- 「一般化」よりも「専門化」
- 「戦略」よりも「ストーリ」
- 「フィルタ(価値の流れ)」よりも「バケツ(作業のチャンク)」
- 「必要最小限の製品(Minimum Viable Product)」よりも「“全部やってくれ”的な欲張り」
- 「顧客が本当に必要なものを学ぶ」よりも「顧客に聞く」
- 「仮説の検証」よりも「何が欲しいかは分かっている」
- 「ストーリ」よりも「タスク」
- 「理由を理解する」よりも「注文に従う」
- 「クラフトマンシップ」よりも「クラップ(Crap)」
- 「真の完了」よりも「ほぼ終わり」
- 「品質」よりも「速さ」
- 「開発時の品質の作り込み」よりも「テストによる品質向上」
- 「技術的負債は負債である」よりも「技術的負債は悪である」
- 「遅延のコスト」よりも「つまらない作業によるコスト」
- 「リリース」よりも「イテレーション」
- 「リリース」よりも「出荷可能なインクリメント」
- 「価値の重視」よりも「コミットメント」
- 「ベロシティプランニング」よりも「キャパシティプランニング」
- 「事実」よりも「見せかけ」
- 「正味(Net)のベロシティ」よりも「総(Gross)ベロシティ」
- 「最良の見積」よりも「不明確なストーリ」
- 「品質」よりも「ベロシティ」
- 「予測」よりも「見積」
- 「マクロな見積」よりも「ミクロな見積」
- 「意思決定のための指標」よりも「無価値な指標」
- 「リーダシップ」よりも「組織的ハック」
- 「出力/成果のコントロール」よりも「入力のコントロール」
- 「マクロマネージメント」よりも「マイクロマネージメント」
- 「チーム全体を支援」よりも「どちらか一方を支持」
- 「行動と解決」よりも「ミーティング」
- 「資格(Qualification)」よりも「認定(Certification)」
講演は,チームを高潔な道に留まらせる方法についてのアドバイスで締め括られた。
- レトロスペクティブの利用
- 段階的な改善
- 一度に1ないし2のアイテムを選択すること
- 必要ならばコーチを得ること
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