Microsoftは7月15日,Azure Premium MessageサービスがGA(General Availability)に到達したと発表した。InfoQが2015年11月にレポートした,最初のパブリックプレビューのローンチ発表から,10ヶ月での到達だ。 Azure Premium Messagingは,Microsoftのプラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)メッセージングプラットフォームである,Azure Service Busをベースとしており,Azure Service BusのStandard Messaging層の持つ,QueueやTopicなどといった既存のクラウドベースのメッセージング機能を備えている。ただし,Premium MessagingはStandard Messaging層のようなマルチテナントのメッセージングプラットフォームではなく,ユーザが自分のワークロード専用にコンピュートを利用することができる。専用コンピュートの結果として実現したのが,メッセージングサービスで処理可能な最大メッセージサイズの拡大だ。これまでの256KBという制限を廃し,Premium Messagingは最大1MBのメッセージをサポートする。
サービスの採用ユーザ数は伸び続けている。Azure Service BusチームのプログラムマネージャであるJustin Conway氏は次のように説明する – “Premium Messagingの利用数は毎月,大幅に増え続けていて,1日当たりのオペレーション数は10億を越えようとしています。Premium Messagingの一般供用が開始されたことは,高い信頼性とスループット,占有可能な環境を必要とするユーザに対して,最先端のメッセージングプラットフォームが提供されるという意味に他なりません。”
Dynamic CRMやBing Maps,アナリティクスサービスなどのMicrosoftサービスに加えて,金融サービス企業,ピザチェーン,保険会社,メディア企業などが,この新たなサービスを利用するユーザセグメントを構成している。
Premium Messagingは,東南アジア,東アジア,西ヨーロッパ,北ヨーロッパ,中央アメリカ,西アメリカ,東アメリカの7リージョンで提供される予定である。以降のリージョン追加は,ユーザニーズに基づいて決定される。
InfoQは今回のリリースについて,Azure Service BusチームのプリンシパルプログラムマネージャであるDan Rosanova氏と議論する機会を得た。氏は次のような話をしてくれた。
InfoQ: 開発チームによる先日のブログ記事には,Premium Messagingのトラフィックが1日あたり約10億オペレーションに達したことが紹介されていますが,これほど多く採用されているのはなぜでしょう?
Dan Rosanova: 遅延や予測可能性に敏感なユーザほど,このサービスに関心を持つ傾向があります。典型的なユースケースは,レスポンス時間が重要で,資産や金銭の授受を伴うEコマースや注文処理などです。ユーザの採用が急増したために,プラットフォームの拡大を急いでいるISVがいくつもあります。
InfoQ: 一部のユーザにとっては,Standard Messagingの現在のメッセージサイズ制限(256KB)が,ある種のシナリオに対する制約になっています。Premium Messagingでメッセージサイズを拡大することにしたのはなぜでしょう,また,なぜ1MBという値を選んだのですか?
Dan Rosanova: Standard Messagingのようなマルチテナントプラットフォームでメッセージを拡大した場合には,全体的なリソースを消費してしまうという懸念があります。Premium Messagingはマルチテナントプラットフォームではありませんので,この点についてはあまり問題にはなりません。また,メッセージストアとしてSQLを使用しなくなったことも,制約を受け難くなった理由のひとつです。ユーザはそれぞれ,自身のメッセージストアを所持します。メッセージサイズの決定には,サイズの範囲を参考にしました。私たちのサービスはメッセージを重視したものなので,シナリオが本当にメッセージ中心なのか,あるいはストレージなのかを見極めることが必要です。将来的に制限を拡大する可能性はありますが,大きくは変わらないでしょう。それでも他のメッセージングサービスと比較すれば,1MBはかなり大きなメッセージサイズだと思います。
InfoQ: 新サービスでの大きなメッセージ処理に興味のあるユーザのためのベストプラクティス,あるいはガイダンスといったものはありますか?
Dan Rosanova: リソース占有モデルを採用しているので,大きなメッセージは小さなメッセージよりも多くのリソースが必要になります。これはメッセージングサービスだけでなく,送信側や受信側でも同じです。サービス内ではメッセージのボディをオープンしないので,シリアライズ処理のコストはサービスよりもアプリケーションのコードの方が重くなります。メッセージのサイズが大きくなるほど,アプリケーションのシリアライズなどの処理でCPUが多く使用されるという認識が大切です。また,大きなメッセージを処理する場合,パフォーマンスを確認するために,サービスとネームスペースのベンチマークを行なう必要があります。メッセージが大きいほどIOPSやストレージをより早く消費しますが,Premiumのパフォーマンスには,常に一貫性があります。
InfoQ: 先日,新しいサービスのパフォーマンスに関する統計情報が公開されましたが,この数値で意外だった部分はありますか?ユーザがさらなるスケールアップを実現できるように,メッセージングユニット(MU)数を拡張する計画はあるのでしょうか?
Dan Rosanova: オンプレミスのメッセージングから出発したという背景があるので,毎秒千件以上のメッセージを相応の速度で処理できる堅牢性はもともと持ち合わせていました。そうですね,その点を超えたことには満足しています。線形なスケール性も目標でしたが,テストの結果からそれも確認できました。利用可能なメッセージングユニットを大きくする件については,大規模な運用でのワークロード共有がいつも重要ですし,こういった重要な決断をユーザに委ねるのは避けたいと思っています。毎秒16,000メッセージの処理が可能ですので,大部分のユーザのニーズは満足できているはずだと思いますが,ユーザからのフィードバックには常に注意しています。MU数の増加については,検討はしていますが,現時点で確定した計画はありません。
InfoQ: 先日トロントで開催されたWorld Partner Conferenceでは,Event Hubs専用のキャパシティを近日中に提供予定だという発表がありましたが,この2つのサービスはどこが違うのでしょう?
Dan Rosanova: Event Hubs専用キャパシティはEAユーザを対象として,春の終わり頃,密かにリリースされました。単一テナントのEvent Hubsユーザの中には,非常に大規模でワークロードの厳しいユーザもいます。Premium Messagingと同じなのですが,それよりもはるかに大きなスケールで,費用モデルも利用量による追加料金のない月額固定価格に基づいています。3ヶ月の購入契約が必要で,製品チームによるサポートが含まれます。週末にちょっと試してみる,というレベルのものではなく,毎秒数十万,あるいは数百万という規模が必要なユーザを対象としたものです。興味をお持ちであればEA代理店,あるいはAzureカスタマサービスに連絡してください。
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