コメンテータで戦略顧問のPhilip Lay氏は先日,自身のサイトの示唆に富んだ記事の中で,テクノロジ産業に対して,破壊ではなく関わりを持つべきだ(Stop Disrupting and Start Engaging),と忠告した。そこで氏が指摘するのは,最新技術によるグローバル化に対する一般大衆の不満,英国のEU脱退投票,米国でのDonald Trump氏の人気,世界全体の地政学的および社会経済的不安定性の一般的レベル,といったものだ。その上で氏は,ハイテク企業に対して,地元の発展とスキル開発のサポート,地方行政や国政との連携,コラボレーションと包括性の重視などを行なうように勧告している。
Lay氏が問題とするのは,ハイテク企業の起こす変革が,社会的影響や意図しない結果を顧みることなく既存産業を破壊することによって,社会が被ることになる影響についてである。氏は次のように言う。
ハイテク企業によってこれまでの生活を乱される産業や,その従事者に対する居丈高な態度が今後も続くようであれば,テクノロジに対する反感の結果として,ひとつの産業を支配し得るハイテク企業に対して,反トラスト的な新たな規制,あるいは法的な制約が課せられる可能性も高くなります ...
氏はその例として,多くの管轄区域におけるUberへの反感を挙げた。同社が対象を拡張し続けた結果,厳格な法律が制定され,このハイテク企業に許される活動に厳しい制限が設けられることになったのだ。
氏は言う。
要約すると,一貫性のない法律と慣習の上で30年以上にわたって実践された世界規模の商業活動,2008年の発生以降もいまだ完全な解決を見ない終末戦争のような経済危機と金融危機,教育とガバナンスを伴わない情報技術の高度化によって起きる情報格差の拡大,といったものが,国や社会地域,従業員とビジネスリーダ,持つものと持たざるもの,知るものと知らざるものなどの間の不平等間を拡大しています – これらの問題は,私たちが今,どのような立場にいるのかを教えてくれるのです。
続いて氏は,その対策としてテクノロジがエリート主義ではなく,平等のための原動力となることに言及し, テクノロジが今すぐ行なうべきこと – 新たなツールとテクニックを提供するものとして,市民世界において考慮すべきことの一覧を提示する。
- レトリックから破壊(Disrupt))のマントラを排除し,行政やその他の機関,さらには世界全体のすべてのユーザや従業員,ユーザとの関わり(Engaging)の概念を受け入れること。
- 主要な技術革新の持つすべての意味を考えて,彼らすべての利益と同時に,考えられる否定的側面との相殺の道を探ること。
- 自分たちのプログラムを行政のそれに合わせること。
- コスト重視のオフショア・アウトーソーシングを最小限に抑えて,生産性を重視したものに代えること。
- 将来的な視野のもとに専門学校や地域奨学金を設立すること。
- 行政や捜査機関のサイバーセキュリティの取り組みに協力すること。
“何のために”ではなく,“何とともに”シビックテック(civic tech)を構築 するのかを究明することです。“感情と行動の違いは何か?”という問いに対する,それが答になります。
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