Serverlessconf London 2016の初日に挙げられたテーマは,‘NoOps’からは程遠い,サーバレスプラットフォームがもたらす運用上の課題についてだった。物理サーバと仮想マシンはかけ離れた概念かも知れないが,それは必ずしもインフラストラクチャ設定が不要になったということではない — その上で開発者たちは,危険を覚悟して,基盤である永続化機構の影響を無視しているのだ。
Patrick Debois氏は開幕基調講演でその状況を説明し,サーバレスはより望ましい,より速い,より安価な(そしてより安全な)ものであり得るのか,と聴衆に問いかけた上で,AWS LambdaやAzure Funcrion,Google Cloud Foundationなどのサーバレスプラットフォームがいまだ大きな課題を — 特にログや監視といった運用分野において — 抱えている点を指摘した。
当日最も支持の多かったプレゼンテーションのひとつ “Serverlessness, NoOps and the Tooth Fairy”を行なったのは,Honeycomb創立者のCharity Majors氏である。Facebookによって買収された(そして2017年1月末にシャットダウンされる予定の)モバイルアプリケーションであるParseから学んだこととして,氏は‘サーバレスが時期尚早であった’という点を主張した。氏の定義によれば,‘サービスは妖精の魔法の粉ではない’。開発者にとって重要なのは,自身がその一部を担う共同責任モデルを理解することなのだ。そのための最高のヒントは,‘クリティカルパスを認める(そして短く保つ)’こと,‘テクノロジとその依存関係を理解する’ことにある。Majors氏が強調したのは,サーバレスプラットフォームの状態管理の側面に注目した時,クエリスコープの問題は解消した訳ではなく,他の誰かがデータベースを管理しているに過ぎないという点だ。この結果として最も重要なのは,‘サービスは自分自身を(あなたの犠牲の上でで)守る’,すなわちクエリが制限されるがために,基盤となるインフラストラクチャを理解も尊重もしないアプリケーションにユーザエクスペリエンスが苛まれることである。氏の極めて広い解釈によれば,当日指摘された問題のほとんどは,オペレーションに関する問題の範疇に含まれることになる。
オペレーションは組織の技術的スキル,プラクティス,設計に関わる文化的価値感,システムの構築と維持,ソフトウェアの提供,テクノロジを用いた問題解決の集合体です。
当日何度も話題になったのは,サーバレスプラットフォームにおける構成管理ツールの利用についてだった。Red HatのRyan Scott Brown氏は,Ansibleを使用したAWS Lambdaの構成に関してライトニングトークを行なった。同じ話題はRafal Gancarz氏の講演 ‘Serverless for the Enterprise’でも,より深く取り上げられていた。Gancarz氏の講演では,最小権限のセキュリティポリシなどの面でHashiCorpのTerraformを使用した構成の提供や,Terraformによるインフラストラクチャ構成によって機能コードとして同じ継続的インテグレーション(CI)パイプラインを共有する方法について解説された。氏はさらに,ログや監視に関するDebios氏の指摘を再度取り上げ,自身がElasticsearch,Logstash,Kibana(ELK)スタックの一部としてKibanaをサーバ上で運用している,すなわちアーキテクチャ全体が完全なサーバレスではないことを語った。
全体としてのメッセージは,サーバレスプラットフォームは当初のデプロイメントやスケーリングの懸念を緩和する上では有効かも知れないが,インフラストラクチャ運用の必要性を排除する訳ではない,というものだ。セキュリティ,バックアップとリストア,ログや監視についての考慮や計画,関連ツールの提供が必要である点には変わりない。これらはサービスプロバイダのWebユーザインターフェースを使って,手作業で初期設定される(あるいはデフォルトのままにされる)かも知れないが,運用レベルのアプリケーションであれば,アプリケーションコードベース管理の他の面と統合された,より高度な構成管理が必要となるだろう。
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