Amber Case氏がQCon San Franciscoで開幕基調講演を行なった。その中で氏は,仮想現実インターフェースの歴史と現状,拡張現実が直面する課題について語るとともに,人々がテクノロジの進歩に慣れることが,これらを克服する手段となることを示唆した。
氏の講演は,仮想現実(VR)テクノロジの現状を検証した上で,VRのデモンストレーションの大半が仮想ローラーコースター搭乗という,使用者の気分を害することが確実なエクスペリエンスであるという事実を嘆くことから始まった。続いて氏が示したのは巨大なハムスターボールという,これも利用者が気分を害することが確実なものなど,さまざまなVRアプリケーションの例だった。
その上でVR開発者に対して,現在の実装に内在する多くの問題を克服する方法について,具体的なアドバイスを行なった。
- 限られた動きで表現すること
- 空間を小さく制限すること
- 環境を急激に変更する“テレポーテーション”を加えること
氏はVR環境で可能なさまざまなゲーム形式について例をあげてみせた上で,聴衆のためにそのいくつかをプレーして,テクノロジの進化の状況とその利用方法を紹介した。
次に氏は,Steve Mann氏の初期の作品について説明し,それが現在の状況に対してどのように影響したか,将来の姿にどのような影響を与えるかを示した。
さらに氏は,拡張現実(AR)の課題と,Google Glassが開発者の思惑に反して成功を得られなかった理由について論じた。拡張現実の成功に先立って解決が必要な具体的課題には,次のようなものがある。
- 帯域幅 – ARは定常的で広帯域幅の接続を必要とする
- 画像認識 – 現時点ではリアルタイムでの能力が十分ではない
- オブジェクトとプログラミングインターフェース – これらはVRの実装によって構築,提供される
AR採用において特に重要な考慮事項は,テクノロジが社会規範を尊重することの必要性だ。イノベーションが成功を収めるには,すでに社会的に受け入れられている製品上に構築する必要がある – 飛躍し過ぎたイノベーションは市場において拒否されるだろう。
氏はVRテクノロジについて,将来的にARシステムを構築するための社会的に許容可能な環境を提供し始めてはいるが,最初に必要なのは,それをさらに広範に受け入れられるものにすることだ,と指摘する。多数のライブラリやAPIが開発された結果,VR環境の構築は,今日では比較的容易な作業になっているのだ。
最後に氏は,さらに詳しい情報を探すための場所をいくつか紹介した。
そして聴衆に向かって,VRをある種の遊び場と捉えて,成長し学ぶためにそれを使うべきだ,と訴えた。
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