マネジメントコンサルタントで著書もあるSteve Denning氏は、組織全体のマネジメントと活動に対するアジャイル原則の適用について調査し、本を執筆してきた。
1. 運動はひとりの個人から始まる。 そういう個人は組織のどこにいてもいい。CEOでもいい。大きな組織では、中間管理職のだれかであることが多いだろう。実務担当者でもいい。個人が将来に責任をもって判断するとき、変革が始まる。これこそが変革が起こるのに必要なことであり、私はそれを起こす手助けをするつもりだ。2. 変革は組織的に起こる。 ある人が別の人に話をして、やる気にさせることから始まる。勇気と判断力とコミュニケーション力のある次の人が、これまでとは異なる未来を想像して実現しようと、出来立てのグループを駆り立てる。すると今度は、彼らが推進者となって、また他の人をやる気にさせる。3. 実装をひらめき導いていくには、小さなハイパフォーマンスチームが必要だ。 従順にやって、ありきたりのパフォーマンスに終わるのでは、役割を果たせたとは言えない。ハイパフォーマンスチームとは、クリエイティブでエネルギーにあふれ、お互いに信頼し合い、何としても成し遂げるという強い意思をもったグループだ。4. 変革はすぐに起こるか、まったく起こらないかのどちらかだ。 いったん組織的な変革が始まると、変革は急激に広がるだろう。そのプロセスはウイルスみたいなものだ。アイデアはウイルスだ。それ自体が成長し、拡大し、伝播する、あるいは、人々を殺し、エネルギーを奪い、新しい制約を生む、そのどちらかだ。両者には、それほど大きな違いはない。次々と小出しに各部署にもたらされるトップダウンのプロセスは、大量の抗体を作り出し、月並みな実装になったり、大失敗につながることさえある。5. 変革のアイデアは絶えず進化する。 ビジョンを作って組織に展開すればおしまい、という問題ではない。組織の状況が進化するのに合わせて、アイデアを適応させ続ける必要があるということだ。組織、そして、組織にいる全員が、変革のストーリーを自らの状況に適応させるようにしよう。そうすれば、それは自分のものになる 当事者意識が芽生えてくるのだ。6. 変革のプロセスは情熱で動く。 情熱とは、アイデアの明快さと価値に対する強い信念と、そのために堂々と戦う勇気のことだ。どんなテンプレートがあろうとも、どんな詳細な展開計画があろうとも、大きな変革を起こすのに必要な、エネルギー、情熱、興奮を呼び起こせはしない。トップダウンの変革計画の御膳立てのほとんどは、実際のところ真の実装にとって非生産的なものであり、変革に対する根深い対立を生むだろう。7. 情熱は集中的で規律あるものだ。 「何でもあり」というアプローチではない。ゴールの実現に向けて集中し、関連するゴールや代替となるゴールにエネルギーが分散しないよう、常に警戒するのだ。進捗を評価して、学んだことに基づいて調整する。どんな価値が加えられたのか、計画的にフィードバックする。自由に作れるのだが、明確に線引きされた、調整可能な範囲内に限られる。8. 外部の助けを借りてもよいが、それに頼らない。 この世の中、まったく新しいものなど存在しない。だから、他人の経験は利用すべきだ。独力でやるのは愚かなことだ。知的なエネルギーは、認知的多様性と、バックグラウンドや世界観の異なる人とのインタラクションによって生まれる。また、外部のアドバイスに闇雲に従って、他人に変革を指図されるのは危険だ。外部のアドバイスを受け取ったら、それを評価し、自分たちのニーズに適応させるのだ。適応させる過程で、アイデアが自分たちのものになる。部外者は口で言っているだけで、そんなに簡単にはいかない。状況に合わせて理にかなったものにすることで、初めてうまくいくのだ。9. 組織のトップは支援し、支援されなければならない。 トップダウンの指示や展開計画によって、ラディカルなマネジメントが実施できるわけではない。しかし、変革や方針決定を保護し、アイデアにつきものの「殺しの脅迫(death threats)」を防ぐための傘を作るには、組織のトップによる支援が重要になる。だが、トップは独力で変革を起こすことはできない。大きな組織の場合、トップは、組織全体に信頼のおける方法で、多くの人とアイデアをコミュニケーションする必要がある。10. アイデアはどんな個人よりも重要だ。 トップダウンの変革計画というのは、そのマネージャが去ると死んでしまうものだ。というのも、後任のマネージャは、これまでやってきたことを変えたがるものだからだ。これに対して、変革が有機的に根付いていれば、アイデアは生き続ける。なぜなら、そのアイデアは多くの人にとって、自分のものになっているためだ。