InfoQはチームのムードに影響を与える要因について、調査を進めている。チームのムードはメンバ個々人のムードの統合なので、個々人のムードと、それがチームの働きにどのように影響しているのかを理解することによって、チームのムードについてより理解が高まるだろう。
Gerald Weinberg氏は100冊以上の書籍を執筆しており、The Psychology of Computer Programming、Becoming a Technical Leader、Change Artistry、Women of Power novels (ムードが重要な役割を果たす)といった著作がある。InfoQは氏に、個人とチームのムード、個人のムードに影響を与えること、チームのムードについて議論すること、など話を聞いた。
InfoQ: 個人のムードとチームのムードは非常に重要なトピックだと考えていますね、なぜでしょうか。
Gerald: 例えば、ふたつの開発組織があったとして、"論理的"なパラメータがすべて同じだったとします。例えば、経験や教育、年齢などです。しかし、すべて同じだったとしても生産性は大きく違います。この場合、ムードに違いの原因があるかもしれません。
InfoQ: 個人のムードについてはどう考えていますか。
Gerald: ムードとは他がすべて同じでも違いとなるものであり、生産性の違いのほとんどを説明します。いや、違いを生むのは態度だ、という人もいますが、態度とは天候であり、ムードとは天気なのです。つまり、態度は変わるとしてもゆっくりですが、ムードは一瞬にして変わります。
InfoQ:チームのムードはどうでしょうか。
Gerald: チームのムードというのは、扱いにくい概念です。というのは、どの時点でも、チームの各メンバは異なるムードを体験していますが、一方で、メンバのムードは他のメンバのムードに影響され、チームのムードはひとりのメンバのムードに引きずられるからです。例えば、1人が落ち込んでいると他のメンバも落ち込むかもしれません。
InfoQ: チームの中で個人のムードが与える可能性について教えてください。
Gerald: 例えば、あるメンバの気分が悪い場合、仕事が遅くなり、チームが納期を逸するかもしれません。また、気分が良くても、行き過ぎると問題になり得ます。例えば、チームのメンバが恋に落ちていると仕事が手に付かなくなり、ミスしやすくなるかもしれません。または、テスト結果を寛大に判断するようになって、問題を看過してしまうかもしれません。
InfoQ: 個人のムードに影響を与えるのは倫理的に正しいと思いますか。例えば、コーチングやチェンジエージェントとして動くことはどうでしょうか。
Gerald: 倫理的に正しいかどうかは問題にはなりません。影響を与えようとするかしないかに関わらず、すべてのコーチはチームのムードに影響を与えるからです。一方、コーチが公然と影響を与えようとしても効果が生まれにくいです。反動が生まれ拒否反応が生まれるかもしれません。"そういう根性論はいらないよ"というふうに。
InfoQ:個人のムードに影響を与えるにはどのように介入すればいいのでしょうか。
Gerald: ムードに影響を与えようとしないことです。どんな感情でも持ってよいということを振る舞いによって示すことです。チームのムードを悪くする介入をするのは簡単です。特にマネジメントが保証するイベントで"元気づける"ことによって悪くなることがあります。例えば、例外的な成果をあげた個人に対して報奨を与えることは、それ以外の個人が怒る結果になることはよくあることです。
InfoQ: ムードや感情について他の人と話すのは難しいと思います。チームで自分たちのムードを共有し議論するために何かアドバイスはありますか。
Gerald: ムードに大きな影響を与えたことがチーム内で発生した出来事である場合以外は、ムードについて議論するのが良い影響を生むかどうか解りません。チーム内の出来事がムードに悪影響を与えた場合、オープンに議論することは役に立ちます。コーチは心理カウンセラーではありません。しかし、事実を重んじ解釈を避けることはできます。また、いきなりチーム全体で議論するのは良くないでしょう。1人ずつ話すのがいいでしょう。というのは、いやいや話す人のほうがチームのメンバ全員の前で気持ちをさらけ出すようにするよりも与し易いからです。
また、以下の条件を満たさない場合は、ムードの問題を取り上げないほうがいいでしょう。
- チームのムードがパフォーマンスに影響を与えていると判断できる場合
- 解決するまでこの問題を追求し続ける意志がある場合
- 自分自身がチームが非生産的なムードになっている原因だ、という結論になることに対して、心構えができている場合