オブジェクト指向やAgile、XP(Extreme Programming)に関するコミュニティ「オブジェクト倶楽部」主催のイベント「オブジェクト倶楽部2008夏イベント」が去る7月1日に行われた。
このイベント中で株式会社チェンジビジョンの熊谷 恒治氏は、「マネージャーが感じるAgileは結構ネガティブ。どう説明する?」というタイトルで、Agile開発をするためにマネージャを説得する方法を自身の経験を交えながら講演を行った。
氏はまず初めに「プロセスではなく、プラクティスが重要だ」「相手がどのような理由なら納得するか考えよ」と述べた。
プラクティスが重要だと言っても、ストレートに説得しようとしても、マネージャは通常は「簡単な言葉の意味と、デメリット」を理解しており、うまくいかないことが多い。ここで、クマガイ氏は次の3点が重要だと述べた。
- マネージャが納得しやすい言葉で説明する。メリットを説明する。
残業を行わず、8時間仕事に集中したい。生活にメリハリをつけたい等々を言えば、管理の点からもマネージャは納得するだろう。 - 毎日努力をアピールしつづける。
たとえば、毎日朝と夕方のミーティングを行うが、8時間集中して仕事をした結果として、朝と夕方を比較して夕方の方が疲れた様子を見せれば、マネージャも毎日頑張っていると評価するだろう。 - 短いイタレーションで、短期間で成果を出す
短いイタレーションの結果、すぐに成果が現れるので、マネージャも喜ぶはずである。なぜなら、マネージャは誰よりもそのプロジェクトの情報をほしがっているが、通常の開発プロジェクトではマネージャはエンジニアからの報告でしか情報を得ることが出来ないからである。
氏は、「マネージャは実は『さみしがりや』であり、楽しいプロジェクトメンバーの一員になりたいのである。だから、ロジカルに説得するより、気持ちの面から仲間に取り込む方が良いのである」と述べた。
説得の甲斐ありAgile開発がスタートした後で陥りやすい問題点を熊谷氏は3つ述べた。
- 周りとのギャップに気をつけろ
他の人と比べて勤務時間が短く、また周りには遊んでいるように見えてしまいがちなので、誤解が生じやすい。これを防ぐためには、常に周りに説明し、理解してもらうことが必要である。他のプロジェクトでAgile開発を行いたいと思っている人たちの邪魔をしてはいけない。 - 形骸化に気をつけろ
1~2年等、長期のプロジェクトになると、たとえば朝会でメンバーが遅刻してきたりして、全員がそろわなくなってしまうことがある。このころになるとマネージャもAgile開発を勉強し、朝会の「本当の目的」を理解するようになる。よって、「意味が無いなら朝会は中止してしまえ!」と怒られてしまうのだ。
朝会を行うのならば本当の意味を常に忘れないようにメンバーが心がける必要がある。 - 調子に乗るな
プロジェクトで採用したプラクティスは、そのプロジェクト、その会社内でしか通用しないものもある。他の事例を取り入れるのは良いが、本当に自分たちに有用か、よく考える必要がある。
たとえば、バグ管理にレゴブロックを使ったりする行為である。Agile開発を理解していない人には、遊んでいるようにしか見えない。
結局のところ、Agile開発を進めるポイントは、マネージャと会社の他のメンバーを説得し、理解してもらうことが必要で、そのためには「相手を理解し、相手の立場を考えて説明し、信頼された人間関係を構築する」ことが重要なのである。