Corey Ladasは「SCRUMバン(リンク)」という興味深い論文の中で、リーンのプラクティスである「かんばん」をSCRUMで利用する方法を紹介した。論文で述べられているのは、進化的なプロセスである。十分に進化すると、SCRUMのほとんどすべてを置き換えられるようになるという。論文では(リンク)かんばんがどんなもので、SCRUMをどう強化するのか解説している。SCRUMを捨ててリーンに移行するつもりがない人にとっても役立つ情報だ。
かんばんはカードを使った見える化の仕組みである。在庫量を調整したり、着手中の作業を管理したりするメカニズムとして、リーン(参考記事リンク)とジャストインタイム生産で使われている。ソフトウェア開発のかんばんは、インデックスカードやポストイットをコルクボードやホワイトボードに貼り付けて利用する。1枚のカードがフィーチャ、ストーリーなどの作業の単位を表す。ボード上でカードを順次移動させて、完成にどれだけ近づいているかを示すのだ。
カードを移動させるのは、ある状態から出て別の状態に入るときである。ボード上にはさまざまな状態が書いてある。カードは常に、どれかひとつの状態の中にある。現在の状態の完了条件を満たしたときにだけカードを移動できるが、移動先は次の状態に限られている。さらに、移動先の状態に空きスペースがなくてはならない。実際の活動を表す状態の手前に「待機」あるいは「待ち行列」の状態を作ることもある。もしも待機状態に作業がたまりはじめたら、そこにボトルネックが存在することがわかる。リーンとジャストインタイムの素晴らしい点がそこにある。常にボトルネックを発見し、取り除きながら、システム全体のスループットを最大化するというゴールに向かって進み続けるのである。
論文では(リンク)かんばん(カード)と紙幣とを対比し、類似性を指摘している。紙幣は、経済圏における貨幣供給の一部を担っている。すなわち、経済における生産能力の一部を体現するものであり、同時に、現実の品物を手に入れるために利用できる。購入者は限られた資金しか持っておらず、どの品物をいつ買うか、意志決定しなくてはならない。同様にかんばん(カード)は内部的な経済の生産能力の一部を体現するものである。ビジネス側、SCRUMの用語を借りればプロダクトオーナーが、一時に使えるかんばんの数は限られている。したがって、かんばんをどう「消費」するか、優先順位による意志決定をしなくてはならないのだ。
Coreyの論文はさらに、リーンのプラクティスが、朝会やバーンダウンチャートなどの従来のSCRUMのプラクティスを改善したり、丸ごと置き換えたりすることができると述べている。Coreyの主張によれば、見積もりは一種のムダであり、多くの場合取り除くことが可能である。Coreyはストーリーを書く人が適当な大きさのストーリーを書く責務を負うべきだと述べているが、具体的な方法については触れていない。
論文(リンク)の結論に対して賛同する人も、疑問を抱く人もいるだろうが、論文を読めばSCRUMチームはリーン、特にかんばんの有用性を評価できるはずだ。また論文は、SCRUMチームがかんばんを使って自分たちのプラクティスを補強するための実践的な方法を示している。
原文はこちらです:http://www.infoq.com/news/2008/08/Scrum-kanban