Eclipse Mylyn(参考記事)の生みの親であり今も開発をリードしているTasktop Techonologies社(リンク)が、2008年6月24日にMylyn 3.0の新しいAPIをベースにしたTasktopのバージョン1.2(リンク)をリリースした。InfoQはTasktopのプレシデント兼CTOのMik Kersten氏(リンク)に今回のリリースとそれによりエンドユーザにどのような変化がもたらされるかを詳しく聞いた。
InfoQ: Tasktopについての簡単な説明と、Mylynとの関わりについて教えてもらえますか。
Mik Kersten: 私たちはMylynオープンソースプロジェクトをベースにして、劇的にプログラミングでの生産性を向上するのに必要なコアツールを数十万のディベロッパに提供しています。Eclipse内の仕事でタスク中心の方法を使うようになると、採用曲線で次に来るのは、今使っている他のツールとその方法を統合することです。Tasktopが関わるのがこのポイントです。Tasktopは商用サポートのあるMylynをベースにしたアプリケーションで、Google CalendarやGmailからMicrosofto Outlookを含むウェブサービスやデスクトップアプリケーションと連携します。Tasktopの素晴らしい点は、強力で発展を続けるMylynコネクタを使った連携システムの上に構築されていることから、Mylynコネクタで数多くの製品の機能をTasktopで利用できることです。
InfoQ: 今回のバージョンで新しくなったのはどのようなことですか。
Mik Kersten:今回のリリースにあたりTasktop Starterが利用できるようになったことを発表しようとしているところです。それはEclipse Mylynの全てのユーザがTasktopの機能の一部を無償で使えるようにするためのものです。詳細についてはすぐに発表します。これにより有償製品は Tasktop Proという名前になりました。そして新しい大きな追加機能はタイムトラッキングとレポーティングです。タスクに費やした時間を自動的にトラッキングする要望は数え切れないくらいのユーザーから受けていました。タスク中心の方法を使うということは、どのタスクが自分のワークフローの一部であるかは既に分かっているということだから(あとはどれだけ時間がかかるかが知りたいから)です。Tasktop Proで各タスクに使った仕事時間を精確にレポートを作れること、グラフやチャートで進捗を追ったり詳細なレポートを作成できることに私たちは大変満足しています。私たちはタスク中心インターフェースの哲学に従って、全てのコントロールをユーザーがおこなえる、つまりレポート作成時に時間データを簡単に調整できるようにしています。自動処理はもちろん、ディベロッパがミーティングや他の作業のようにコンピュータ上では作業をしないことのためにかかった時間を調整することもできるのです。この機能に対しては何百もの要望がありましたし、多くのディベロッパが定期的におこなう必要のあるタイムシートやその他レポートの作成を劇的に簡単にできたことは大変喜ばしいことです。
下のスクリーンショットはMylyn 3.0をリリースした翌週の金曜の午後のものです。これを見るとすぐに私が各タスクにどれだけ時間をかけたか(表)、Mylynにかけた時間と Tasktopの時間との比率(パイチャート)、管理にかけた時間(棒のグレー部分)とタスクにかけた時間(棒のカラー部分)の比率が分かります。
I私は仕事日の約90%をTasktopに費やしていますが、今回のリリースで私が気に入っていることのひとつはUIの効率化です。たとえば、各ワーキングセットにワンクリックでアクセスできる垂直トリムバーがあります。これのおかがで各ワーキングセットにコメントが付けられたかタスクがどれだけあるかが正確にわかります。そしてワンクリックで、Mylynに関係するあらゆることを表示するワークスペースの入ったワーキングセットから、Tasktopに関係するあらゆることを表示するワークスペースの入ったワーキングセットに切り替えることができます。私たちの目指すゴールのひとつに、必要な情報を得るのためのクリック数を減らすことがあります。この取り組みの一環としてタスクに関連する情報の連携を高めることを続けています。たとえば、ウェブページをタスクの関連資料と設定して、タスクに戻った時にすぐにそれを表示したりすることです。しかしTasktopの新しいトリムバーのような今回追加された効率化されたUIもまた、必要な情報すべてをすぐ手に得ることを確かなものにする助けとなるものです。
InfoQ: TasktopはEclipse GanymedeでリリースされるMylyn 3.0の新機能をどのように使っているのですか?
Mik Kersten: Mylyn 3.0には多くの新機能があり、それにはオフラインでのタスクの作成やより高速でよりよくまとめられたタスクエディタなどがあります。しかしMylyn 3.0で一番重要なのは最新のAPIです。Tasktop TechnologiesはオープンソースのAPIの重要性を信じていますし、MylynとEclipseプラットフォームから提供されるAPIには MylynをベースにしたTasktopや他のツールが使う同一でオープンなAPIという役割があります。これにより高度な統合体系ができ、MylynコネクタでCollabNetやJIRAやRallyといったレポジトリと連携することを可能にしてきました。またTasktopや SpringSource Tool Suiteのような革新的な生産性向上ツールをこれらのAPI上で作ることもできます。Mylyn 2.0からMylyn 3.0になるにあたり、APIはより堅牢になり、実装の詳細をより気にしなくてよくなり、コネクタを作ったりそのオープンソースに参加するのに興味のある人たちに対してより優しいものになりました。
InfoQ: Tasktopの無償版であるTasktop StarterはEclipseユーザに対してどのようなものになりますか?
Mik Kersten: ユーザはまず、認証されたパートナのコネクタであればワンクリックでインストールできることに気付くはずです。これにより更新サイトやマニュアルでのコネクタのバージョン管理に煩わされないようになります。またアーリアダプタやアプリケーションを最新の状態に保ちたい人なら、Mylynの自動更新によって最新のリリースビルド、あるいはウィークリビルドに更新されることのメリットも感じるでしょう。タイムトラッキングのダッシュボードでは、今週どのタスクに時間が使われることになるかが分かることに喜びを感じるユーザも多いはずです(これはEclipseを使った作業についてのみで、Eclipse外での時間やレポーティングのフル機能を使うにはTasktop ProでOSにプログラムをインストールする必要がある)。そして、Gmailとの連携を望むディベロッパから非常に多くのリクエストを受けていたので、この機能を追加し無償で提供することにもしました。Tasktop Starterは日常の使えるツールにもなりますし、タスク中心のインターフェースでどのようなことができるかを感じるためにも使えます。Tasktop Starterが気に入ってもらえれば、Tasktopの備えるより多くの機能で生産性を向上できるTasktop Proをを試すことができます。
InfoQ: TasktopとSpringSource Tool Suiteでタスク中心のインターフェースが採用されたことはMylynにどのような影響を与えたのでしょうか?
Mik Kersten: Mylyn を組み込み、それを機能と差別化のコアとしているこの2つの商用ツールの存在はMylyn APIが進化する上でキーとなるものでした。Mylynプロジェクトの最初のゴールは事実上このタスク中心インターフェースへAPIとコアツールを提供することでしたし、それを可能にする唯一の方法はMylynを利用するユーザや企業から情報を得ることでした。たとえば、Tasktop Tecehnologiesがタスクリストを拡張してMicrosoft OutlookやExchangeと連携するようにしたいと考えたとき、タスクがローカルのアプリケーションやウェブサービスと連携できるような抽象化が必要でした。そこで私たちは必要なAPIとテストケースをMylynに提供し、そのことで他の人たちもそのようなローカルのタスクレポジトリへのコネクタを実装することができるようになりました。
SpringSource Tool Suiteにも同じような話があります。キーとなる機能のひとつである新しいタスク中心チュートリアルを実現するために、SpringSourceはタスクよりチュートリアルドキュメントと関連性のあるコンテキストを読み込んだり解放できるよう、関連するAPIをより柔軟なものに改良しました。多くのオープンソースの参加者があらゆる方法で拡張を続けていますし、私たちもAPIや機能に対してひと月に数十ものパッチをあてています。商用製品であれオープンソースプロジェクトであれ、そこにオープンに参加する人たちがいることは、Eclipseの世界で活動することを楽しく興味深いものにしています。
InfoQ: MylynはEclipse独自のテクノロジでしょうか。それともEclipse IDEの他でも使えるものでしょうか?
Mik Kersten: Mylyn はどんなJavaアプリケーションからでもコアコンポーネントを使えるようにするレイヤ型のアーキテクチャを備えています。たとえば、Tasktopにはいくつかのサーバサイドアプリケーションが含まれていて、これらはBugzillaやJIRAのようなウェブサービスと通信するためにMylynのコア機能をそのJava APIを通して使っています。また抽象UIはEclipse外でも組み込むことができます。たとえば、Victoria大学のCHISELグループが作ったSwingベースのアプリケーションではMylynの関心度(degree-of-interest)モデルを使ってバイオ技術の視覚化をおこなっています。そしてまた、MylynをEclipse RCPアプリケーションに組み込むこともできます。現時点でのその一番いい例がTasktop Pro for Windowsで、これはTasktop Pro for Eclipseと同じ利便性を、プロジェクト管理者のようなノンプログラマをターゲットに提供するものです。
InfoQ: Mylyn、Tasktopそしてタスク中心インターフェースの今後の予定はどうでしょうか。
Mik Kersten: Mylynについては、タスクリストとタスクエディタの改善に注力を続けます。そのことでより柔軟でより多くの情報を扱えるようになります。また連携を支援することにも注力を続けますので、コネクタの数の増加も続くでしょう。
Tasktop については、組織内でもチーム内でもタスクに関わるコラボレーションをより手軽にできるようにすることを続けます。多くのユーザからFirefoxや ThunderbirdといったMozillaアプリケーションとの連携のリクエストを受けているので、それも視野に入れています。そしてEclipse のプログラマが私たちと同じように仕事のフローをスムースにこなせるくらいに連携や機能が充実すれば、Tasktop Pro for Windowsのアプリケーションに注力して、ソフトウェア開発に関わっているユーザであれ関わっていないユーザであれ、技術寄りでないユーザも対象にしたいと考えています。
私たちが目指すのは、タスク中心インターフェースを採用した人がみな最低でも2倍の生産性を得られるようにすることです。なぜならTasktopの私たち全員やブログで賞賛してくれている多くのユーザが少なくともそのレベルを実現できているからです。またこのミッションの一環としてMylynやTasktopのベースとなっている関心度モデルにも磨きをかけていきます。タスク中心インターフェースによって目指すのは、数ヶ月前におこなっていたタスクに戻ってきたような時にでも、関係する全ての必要最低限な情報を見ることができて、続きにすぐ取り掛かれるようにすることです。このゴールを表したのが、私たちのウェブサイト(リンク)の新しいスローガンであるOffload your brain(頭を解放する)なのです。