リスク管理は、リスクを判断し、軽減し、監視することに向けて行われる活動だ。多くのアジャイル実践者は、アジャイルプロジェクトのリスク管理のプロセスが従来のプロジェクトとそれほど異なっていないと確信している。このプロセスは、アジャイルではちょっと軽いものなのかもしれないが、リスクを見つけてふるいにかけ、分類し、解決する計画を作成するステップは、相変わらず従来のプロジェクトに近いものだ。
Mike Cottmeyer氏は、アジャイル方法論は、リスクを特定し、軽減する点で優れていると(リンク)提案した。彼によると、
リスク管理のプロセスはプロジェクト運営の構造の中に構築されるので、アジャイルではリスクを効果的に管理できます。リスクは、プロジェクトのどこにでもあるというのは暗黙の了解です。リスクは、リスク一覧の中には入っていません。リスクは、チームミーティングや定期的なリスクレビュー活動で軽減されるものではありません。リスクを扱うことを常に考えていなければならないのです。リスクを軽減する戦略はプロジェクトの外では続きませんが、作業を構造化し、計画する方法のまさしく本質に影響するものです。
彼は、さらに3つのカテゴリにリスクを分類した(リンク)。
- ビジネス的リスク – 保証したビジネスの価値と共にプロジェクトを納品するよう対応する。
- 技術的リスク – 時間と費用の制約の中で、技術的な解決の可能性を扱う。
- 経営的リスク – 人とインフラに関する条件を扱う。
Mike氏によると、アジャイルは頻繁に納品し、絶え間なく検討して適応することを促すという事実のおかげで、本質的にリスク管理になっている。
しかしながら、アジャイルが本質的にリスクに対応するとすべての人が同意しているわけではない。
Jurgen Appelo氏(リンク)は、少なからずアジャイルプロジェクトではリスクへの集中が欠けていると提案した。
彼によると、
リスク管理は、Prince2の一部、PMBOKの一部、そして、CMMIの一部です。しかし、アジャイル手法の本で、このことにはっきりと取り組んでいるのをあまり見ることはありません。これはおかしいと思います。
彼は、プロジェクトマネージャが、しばしばプロジェクトの奥深くに入り込み(リンク)、木を見て森をみないことにも言及した。これによって、結局、リスク管理への集中がひどく欠けてしまうのだ。
James Shore氏(リンク)が、効果的なリスク管理はチームが確固としたコミットメントをするのに役立つと指摘した。彼は、プロジェクトの特定のリスクを管理するのに、リスク乗数とバーンアップチャート(リンク)のようなツールを使うことを提案した。
リスク乗数は、メンバの離職、要求の変更、作業の中断などの共通リスクを明らかにします。これらのリスクの乗数によって、日にちを決めて、どれだけのストーリーポイントの作業を終わらせるかを見積もり、それが正しいかどうか知ることができます。
James氏は、チームのベロシティが一定で、イテレーションの終わりにストーリーがすべて「完了」する厳密なプロセスで、以下のリスク乗数を提案した。
リスク乗数
| 見込み | 厳密なプロセス | 説明 |
| 10% | 1 | 無視--ほとんど不可能 |
| 50% | 1.4 | 限界のゴール--50/50の可能性 |
| 90% | 1.8 | コミットメント--実質的には確実 |
さて、コミットメントするために、この乗数は以下のように当てはめられるだろう。
| 見込み | 完了するストーリーポイント | 説明 |
| 10% | 140 (140 ÷ 1) | 無視--ほとんど無理 |
| 50% | 100 (140 ÷ 1.4) | 限界のゴール--50/50の可能性 |
| 90% | 78 (140 ÷ 1.8) | コミットメント--実質的には確実 |
James氏によると、
これによって、利害関係者や重役たちにコミットメントできるだろう。「私たちは、リリース日までに78ポイント以上はほぼ確実に終わらせます。従って、機能A、B、Cの納品をコミットメントします。100ポイント完了する可能性は五分五分ですので、限界のゴールとして機能X、Y、Zを計画しています。」
このように、リスク管理は、従来のプロジェクトと同様、アジャイルプロジェクトに不可欠な部分だ。重要なことは、リスク管理に必要なだけ注目し、効率的に軽減し、そのリスク管理に基づいてコミットメントすることである。
原文はこちらです：http://www.infoq.com/news/2009/01/agile-risk-management