The McKinsey Quarterly Report は Michael Chui 氏、Andy Miller 氏、Roger P. Roberts 氏による最近の調査報告(リンク)を公表した。この調査はここ数年間にわたり50以上のアーリーアダプタ企業を対象としたものである。この調査の目的は企業におけるユーザ参加の向上のための Web 2.0 技術導入の成功に関する見識を深め、企業内で Web 2.0 ツールを導入する大きな機会を提案することであった。
Web 2.0 はさまざまな技術を対象としています。最も広く利用されているのはブログ、ウィキ、ポッドキャスト、情報のタグ付け、予測市場、そしてソーシャルネットワークです。[...] それらを以前の技術と区別しているのは、それが有効とされるのに必要となるユーザ参加の度合いが高いことです。
Web 2.0 技術の分類を換言して、著者はそれらを以下のカテゴリに分類している。
- コラボレーション – ウィキ、共有ワークスペース、他
- コミュニケーション – ブログやポッドキャスト等を通じた広範囲なコミュニケーションの可能性の提供
- 集団的推定 – 集団による力の利用、 情報市場を用いた "クラウドソーシング"
- メタデータ生成 – タグ付け、キュレーションおよび集団的フィルタリング
- ソーシャルグラフ – 新しいアイディア、ソリューション、アプリケーションの提供のために人々のつながりを活用するソーシャルネットワーク
これらのツールによって引き出される可能性は以下の図で説明される。
企業内での Web 2.0 の可能性
著者は企業が Web 2.0 の世界のナビゲートおよびこれらの技術を成功裏に実践する手助けに必要となるガイダンス、引用例、管理上の規範を提供している。
1. ボトムアップ文化への転換はトップからの支援が必要。
Web 2.0 プロジェクトはしばしば草の根的な試みとして見られますが、[...] ユーザ参加の成功には [...] 草の根の活動だけでなく、時には上級管理者がお手本となり、また形式張らない手段で指導するといった異なるリーダーシップの手法が必要になります。
2. 最善の利用はユーザから—ただし規模拡大の手助けが必要。
アプリケーション(の特定および優先順位付け)は(伝統的に)主として既知の業務プロセスにおける有効性および効率性を向上させることに焦点が置かれています。[...] 一方、我々の調査によれば参加型技術を通じて真価を発揮するようなアプリケーションはしばしば管理層が期待するようなものではありません。(管理層は何が有効なのか観察して、その後で規模を拡大する必要があります。)
3. 作業フローの中のものが馴染むもの。
参加型技術はユーザの日々の作業フローに組み込まれた時に最も成功する可能性が高くなります。(... 例として)Google はそれとは反対に教訓的な事例です。 Google は一般に行われてきた業務の手法を修正し、従業員が実際にどのように仕事をしているかを参考にした Web ツールを作成してきました。この会社のエンジニアは業務の進捗報告のための主要ツールとしてブログやウィキを利用しています。マネージャは彼らの進捗と平行して作業フロー上のデータを簡単にマイニングすることができるツールを使用して指示を与えます。エンジニアは他の同僚とよりうまく業務を調整でき、必要な時に後方支援を依頼あるいは提供することができます。
4. 参加者のエゴとニーズに訴求する—財布ではなくて。
(参加者にとって)より効果的なアプローチは Web のエトス(風潮)と参加者の認知欲求を狙う、すなわち関連コミュニティ内での参加者の評判を高める、熱意に報いる、あるいは貢献の価値および有用性を認めることです。
5.正しいソリューションは正しい参加者から。
ユーザ参加のクリティカル・マスを作り出すことができ、また価値を増すことができるユーザをターゲットとすることはもう1つの成功への鍵です。自律的な取り組みを推し進めることができるユーザ(多くの場合、個人用の潤沢なネットワーク環境を持っていて知識を共有してアイディアを交換するつもりがある、熱心にいち早く技術を利用する人たち)を選ぶためには、よく考えられたアプローチが必要になります。
6. トップダウンとリスクの自己管理とのバランスをとる。
ユーザ参加が失敗する一般的な理由は参加に対する不安、もっと言えば恐れです。時として、自己組織化の性質および反対勢力に対する管理層のコントロールの欠如が問題となります。別のケースでは、ブログ、ソーシャルネットワーク、そしてその他の場における、企業にとって有害なコンテンツの潜在的な悪影響が課題です。企業はしばしば自由と規制の正しいバランスを維持するのが困難となります。
賢明なマネージャであれば法務、人事および IT セキュリティの担当者と連携して妥当な指針を確立するべきです。しかし結局のところ、成功するユーザ参加とは参加者との本当の会話をすることが肝要であるということを企業は認識しなければなりません。
調査報告は「企業のリーダーは現在の実践状況を見渡してみる必要があります。ある程度管理された阻害を快適と感じれば、彼らは新しい参加型ツールを試し始める可能性があります。」という提言で締めくくられている。
ぜひ The McKinsey Quarterly でオリジナルの記事(リンク)をチェックしてほしい。
原文はこちらです:http://www.infoq.com/news/2009/03/web20-in-enterprise