ISO 9241 規格において、ユーザビリティは「特定の利用状況において、特定のユーザによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザの満足度の度合い」 と定義されている。 しかし、この規格では使いやすさ、さらにはシステムのユーザビリティを評価する具体的な方法には言及していない。アジャイルユーザビリティグループでは、最近システムのユーザビリティを評価する方法についていろいろ議論されている。
Andrea氏は、「客観的な方法で2つのプロダクトの使いやすさを比較しなければいけない」と発言し、評価の基準に関する議論を開始した。使いやすさを評価することにより、組織内のプロダクトを廃止したり、他のプロダクトを推奨したいと考えているらしい。
Daniel Naumann氏は「プロダクトが現存するプロダクトである限り、それらを比較する一番いい方法はそれそれの処理の流れを比較することである」と主張した。さらに彼は以下のように言及した。
いまだ「生存」しているプロダクトなのであれば、例えばログファイルやタスクを完了する割合や時間、ドロップアウトする割合やドロップアウトするポイント、などプロダクトの「健康状態」に関する情報が必要でしょう。そして、 実際のユーザに話を聞き、フィードバックを得ることが一番よい方法だといえます。
同じ流れでMarjorie Prie氏は以下のように言った。
最初に、すでに持っている確実な証拠を調査することをお勧めします。 その後、代表的な顧客を抽出し、自由回答形式のインタビューを実施したり、実際にユーザが自由に操作する様子を観察したらどうでしょう。 お客様は何を重要だと考えていますか?お客様は比較の基準としてどのプロダクトを使用していますか?お客様はどの機能の使用を避けていますか、またどこでワークアラウンドを紹介したり、外部のヘルプを使用したりしていますか?
Whitney Quesenbery 氏は「使いやすさ」からさらに一歩踏み込み、「ユーザビリティ」を測定することを主張する。彼女は、ユーザビリティを測定することは、5つのE (effective, efficient, engaging, error tolerant, easy to learn)の作用を評価することであると主張する。 彼女はユーザビリティの評価計画を以下の表にまとめた。
特徴 |
ユーザビリティ評価のタイプ |
効率性(Efficient) |
実際のタスクにかかる時間(またはクリック数やページビュー)を測定する。ソフトウェアの実稼働バージョンと実データに近いサンプルデータを使用する必要あり。 |
有効性(Effective) |
どの程度正確にタスクが完了し、タスク実行中にどのくらいの頻度でエラーが発生するのか、評価する。 |
魅力(Engaging) |
ユーザ満足度調査や定性的なインタビューによってユーザのソフトウェアに対する支持の程度や態度・考え方を計測することができる。 |
エラー対応(Error Tolerant) |
エラーを起こしても全体に悪影響を及ぼさない程度。テストのユースシナリオの潜在的な問題をタスクシナリオに含める。 |
学習容易性(Easy to Learn) |
テスト参加者に対する教育の量を抑制する、または異なる知識/経験の領域・レベルのユーザを注意深く採用する |
彼女が言うには、5つのEに従ってユーザビリティを測定することにより、システムのユーザビリティを客観的かつ公平に分析することができる。
同様に Jakob Nielsen氏は ユーザインタフェースのデザインに関する10の一般的原則を紹介した。これらはユーザビリティに関する10の経験則と呼ばれ、ユーザビリティはこの経験則で測定できる。
Andy Edmonds氏はCommon Industry Format 規格に言及した。 これはユーザビリティテスト結果報告書の標準書式である。彼は以下のように語った。
CIFはテスト結果を計画、実行、表現する非常に厳格な方法を提供します。
このように、システムのユーザビリティに関する統計情報を収集する方法はいろいろある。それぞれの方法は手間がかかるものもあれば、そうでないものもある。アジャイルチームは、どれだけ詳細な情報が必要なのか、客観的な方法でユーザビリティを確定しなければいけないかなどの条件により、評価方法を選択すればよい。