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組織におけるエンタープライズアーキテクチャの価値は何か?

原文(投稿日:2009/6/23)へのリンク

Richard Veryard氏は新しく書いた「A Value Proposition for Enterprise Architecture:エンタープライズアーキテクチャにとってのバリュープロポジション」というタイトルのブログ記事でエンタープライズアーキテクチャ(EA)の役割について述べている。

エンタープライズアーキテクチャについていえば、従来の見方(EA-as-IT-planning:IT計画の基盤としてのEA)と新しい見方(EA-as-business-strategy:ビジネス戦略としてのEA)があります。私はバリュープロポジション(単なる価値でなく、強みとなる価値)に対する問いが、エンタープライズアーキテクチャチームの進化の可能性と多くの役割を担う潜在力について、より興味深い議論の道を開いてくれると思います。

氏によるとバリュープロポジションのキーとなる問いがタイムスケール(時間の長短)だという。一般的に、新しいビジネスと技術的の研究と開発を通じて長期的な価値をももたらすことEAチームの目的となる。しかし、そのような価値を測り把握するには一般的に長い時間が必要となることが、EAの方向性を決める上での問題となる。一方、企業プロジェクトのIT効果をなるべく高めるべく、EAチームがそのプロジェクトに参加することを余儀なくされることもよくあることだ。

氏はEAがプロジェクトに同調しすぎることの主な問題を2つ指摘している。

ひとつは視点に関することです。もしEAがプロジェクトと同調しすぎたとしたら、EAの視点とプロジェクトの視点の違いがどこにあることになるのでしょうか?もしプロジェクトで何か間違っていることをしているのが問題なのであれば、EAがプロジェクトの優秀なアナリストとは異なった視点をもって問題を修復できるでしょうか?もしEAが長期的な視点をもたないのであれば、バリュープロポジションの大部分は優れたツールや技術に基づいたものになるでしょう。…(略)…ふたつめの問題は、プロジェクトを監視するという役割とプロジェクトの成功を確かなものにするという役割の大半が重複していることです。大きなIT組織ではEA以外にも、プロジェクト管理、プログラム管理、ITガバナンス、品質管理(コントロールやチェック)をおこない、ツールや方法論を用いていることでしょう。これらはそれぞれが「知識体系」をもち、それぞれがプロジェクトを悪い方向に進むことを防いでいる(そしてその功績を誇っている)ことでしょう。「サイロ」(外部とやり取りを行わない状態)という言葉はこの点の懸念を表明したものです。

これはEAの本当の顧客が誰なのかという問いにもつながる。

予算を負担するCIO(最高情報責任者)あるいはCFO(最高財務責任者)でしょうか?「自分たちのために」EAのための時間や労力を費やし、EAが守ろうとすることを必ずしも嬉しがるわけではないビジネス事業の幹部やITプロジェクトマネージャでしょうか?

このトピックについては氏の別の記事「EA:Think Globally, Act locally(グローバルに考え、ローカル行動する)」でも議論をおこなっている。

EAが果たすべき役割は何か、ということについてはさまざまな意見があると氏は述べる。

 

  • Nigel Green氏
    もしEAのことをForrester Research(米調査企業)風にビジネステクノロジーというのであれば、私は「グローバル」派です。・・・EAは単にITであるだけでなくビジネスの変質に関わることです。
  • Anders Østergaard Jensen氏
    EA = S + B + T (訳者注:それぞれ戦略、ビジネス、テクノロジーのことと思われる)であることからEAはグローバルと推論できます。
  • Colin Wheeler氏
    エンタープライズアーキテクチャは論理的なフレームワークであり、ビジネスが合理的な決定をそこでおこなうためのものだと思います。私にとっては間違いなくグローバルにフォーカスした性質をもつものです。

氏によると、EAのグローバルな目的とローカルな目的を同時に考えることはPatrick Geddes(スコットランドの生物学者、教育者、都市計画学者)のThink Global, Act Localというモットーを借用したTom Graves氏によって提唱されたことだという。

「IT単独ではグローバルであるには不十分です。・・・組織全体のEAが欠如しているとITの問題を起こします。ローカルに行動し(IT)、グローバルに考える(EA)のです。EAをITシステムなどの細部に反映させつつ、グローバルを常に念頭におかないといけません」Tomのグローバルの重要性について確信する姿勢に変わりはありません。「EAは企業のアーキテクチャです。ITではありません。ITは単にひとつの実装であり、それ以上のものではありません。IT中心主義を捨てましょう!」

氏はこの記事を次のようにまとめている。

AS-IS(IT部門の内部において挫折したEA設計者)とTO-BE(事業部門から目を置かれるEA設計者)との間には明らかに大きなギャップがあります。エンタープライズアーキテクチャは企業戦略の一形態であるべきというChris Potts氏の意見を取り入れても、ほとんどの組織で手を付ける場所があります。将来について考えることはなにも悪いことではありませんが、それを本職としているEA設計者がいる組織もあるのです。

EA設計者、そして設計者全般の役割は、発展を継続することだ。90年代初め、設計者の人数は少なく、優れた開発者ではあるけれども人を管理することを望んでいない人が兼務していることも一般的だった。90年代の終わりには、ITのプロにとって設計者になることが一番の流行になった。この時にはJ2EE設計者や○○設計者やセキュリティ設計者というようにあらゆる方面の設計者がIT界にはいた(その多くは今でもいる)。そして最も高いクラスの設計者であるEA設計者への関心が生まれた。設計者の役割の定義はさまざまだ。会社にもよるし、ビジネス戦略というところもあれば、技術のエキスパートというところもある。その結果として、設計者の役割はほとんどはっきりしてない。「EAとはつまり何なのか、EAをEAたらしめる(新しく生まれ、変わっていく)ことは何なのか?」という問いはいまだ答えを待っている。

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