Rubyの次期バージョンが年内に予定されている。現在は最初のプレビュー版である 1.9.2 Preview 1 が入手可能であり,変更内容の詳細なリストが公開されている。リリースノートには次のようなAPI変更が挙げられている。
- ソケットAPIがよりオブジェクト化された。
- Time が再実装・拡張された。最大・最小の制限値がなくなり,2038年問題が解消した。
- 乱数シーケンスを発生させるRandomクラスが追加された。
- Method#parameters が追加された。Merbユーザには朗報である。
最後の項目にある新しいメソッド Method#parameters
は,メソッドの仮引数の数と名称を必要とする Merb のアクション引数機能には不可欠なものだ。Ruby 1.8.x ではこの機能を ParseTree を使用して実装していたが,Ruby 1.9.x で ParseTree が廃止(EOL:End of Life)されて利用できなくなったため,アクション引数は 1.9.x で使えなくなっていた。そのために JRuby と 1.9.1 では methodpara という gem を使用した回避策を用意していた。
今回追加される Method#parameters
を使えば,メソッドの仮引数は簡単に取得できる。単にメソッドのハンドルを取得して parameters
をコールすればよいのだ。例えば次のメソッドの引数は,
def hello(a,b,x=42, *args)
このように表される。
[[:req, :a], [:req, :b], [:opt, :x], [:rest, :args]]
Ruby Trunk ChangeLog(ファイルサイズが大きいので注意)をざっと見渡すと,Narihiro Nakamura 氏が最近行った改良が目に留まる。その 'Longlife GC パッチ' (リンクはdiffファイル)は旧世代オブジェクトを他のオブジェクトとは別扱いするように,VM と GC に変更を加えるものだ。変更内容を見る限り,現行方式での旧世代オブジェクトはメソッドボディやインラインのキャッシュエントリであるようだ。旧世代オブジェクトの更新追跡は Remembered set を使用して行っている。
1.9.2 に計画されている追加機能は他にもあるが,最終バージョンにどこまで実装されるかは未定である。
互換性のあるRubyライブラリを開発する作業について言えば,主要バージョンがただ一つだった5年前のRubyの方が明らかに容易であっただろう。今日のライブラリは対象としている Ruby の実装に加えて,Ruby 1.9.x との互換性も確保しなければならない。
この問題に関して David A. Black 氏が Ruby のバージョン情報サイト http://ruby-versions.net/ を公開している。
歴代のものから最新版まで,数多くのRubyのバージョンと実装に ssh を使ってアクセスできるサイトを用意しました。Ruby 1.0 から 1.9.2 スナップショットまで,Rubinius,JRuby,そして Ruby Enterprise Edition が使用できます。
コードチェックの方法としてはもうひとつ,MultiRuby がある。これは Ruby の各バージョンをダウンロードして,そのすべての上でコードを実行するというものだ。