近年の産業界の思考方法に、SOAがどれだけ浸透したかを考えると、CORBA, エンタプライズJava あるいはWebサービスなどの他の技術と比べると、標準の少なさには、驚くばかりである。もちろん、多くの人々が、SOAから連想する、様々なWS何とか標準や仕様書が存在する。しかし、意図的に実装にとらわれない標準、という観点からでは、 OASIS のSOA参照モデル 長い間唯一であった。 OMGがSOAモデリング言語を公開し、Open Group がSOA Working Group の結成を公表 と、同時に SOA Source Bookを公開した。
過去数カ月にわたって、これらのすべての活動のメンバや他の人々が、様々な取り組みを調整し努力して、新しい白書 アーキテクチャ中心にSOAのオープン標準の概観を案内する ( 彼らの全サイトで入手できる)を公開したばかりだ。 白書に書かれているように:
この共同白書が、説明し、位置づけている標準の対象には、SOA参照モデル、オントロジ、参照アーキテクチャ、成熟度モデル、モデリング言語そして統制がある。白書は、それらの似ている個所を概観し、個々の標準の強みを際立たせ、そして、どうのようにそれらを、相補うように、いっしょに使うことができるかにも言及している。これらの仕様書のユーザに対して、SOAを旅する中で、自分たちは今どこにいて、これからどこを目指すのか、ということと一貫性を保ちながら、自分たちのニーズに最適な技術的な製品を選ぶ際のガイドとしても、意図されている。
白書の中で考察された仕様書と活動成果には、OASISのSOA参照モデル、 OASISのSOA基盤参照アーキテクチャ、OMGのSoaML仕様書、Open GroupのSOAオントロジ、Open Groupの参照アーキテクチャ、Open GroupのSOA統制フレームワーク、そして Open Groupのサービス統合成熟度モデルが、含まれている。
SOAライブラリに素晴らしいものが、加わった。白書は、意図的に、技術にとらわれず、WebサービスやJBIのような、SOAの実装方法については、透明性を保っている。一方で、ベンダに誇大広告をさせないよう、そして潜在的に、白書の寿命を延ばすことは、よいことであると、考えられる。しかし、他方、報告されたことの実用性については、疑問が投げられるであろう。
白書によると、存在する標準は、以下のようにグループ化できる:
- 参照モデル -ある環境の実体間の重要な関係を理解するための、抽象的なフレームワーク。白書は、 OASISのSOA参照モデルを
SOAの "本質" をとらえたもので、SOAの語彙と共通の理解を提供するもの、と述べている。参照モデルの目的には、異なるSOAの実装間で、一貫して使うことができる、共通の概念的なフレームワーク、特定のSOAソリューションをモデルする際に、明確に使用できる共通のセマンティックス、特定のSOAをサポートしつつも、一般的な設計テンプレートを説明し、支持する統一的な概念、そしてすべてのSOAに適用すべき定義集が含まれる。
- 参照アーキテクチャ 参照アーキテクチャ-基盤的アーキテクチャから共通システムアーキテクチャ、業界や組織特有のアーキテクチャまで及ぶ、抽象化の様々なレベルで、定義することができる。このカテゴリでは、いくつかの技術的な製品が入手できる。OASISのSOA基盤参照アーキテクチャ は、
エコシステム/パラダイムの視点からSOAをモデル化する、ビューベースの抽象的な参照アーキテクチャの基盤を提供する。これは、3つの観点を指定する、すなわちサービス エコシステムの観点、SOA実現の観点、SOA所有の観点である。
Open Groupの参照アーキテクチャが、提供するのは:エンタプライズ アーキテクチャのための基礎、すなわち設計図である。エンタプライズ アーキテクトが、開発中の個々のプロジェクトやソリューションで、実現される標準として使える、テンプレートあるいは設計図である。SOA参照アーキテクチャが、実現される組織において、このことが行われるだろう。このSOA参照アーキテクチャは、関係する消費者組織、ベンダ、他の標準団体、そしてほかのOpen Groupのプロジェクトを含んだ、様々な種類のシナリオをサポートするように設計されている。
- オントロジ-ドメインにおける用語とドメイン間の関係について、明示的、形式的な仕様書である。白書は、Open GroupのSOAオントロジが、
SOA空間内の関連した概念のセットをとらえ、それらは何で、どのように互いに関連しているかを説明している、と述べている。その目標は、SOAのコンテキスト内で、これらの用語や概念の理解を容易にすることであり、潜在的にモデル駆動の実装を容易にすることである。オントロジは、 OWL (Web Ontology Language)で表され、自動化が可能で、ツールで処理できるようになっている。
- 成熟度モデル -現在の成熟状態を評価したり、査定する手段を意味している。現在の成熟状態から目標の成熟状態に達するために、価値ある提案や変革のロードマップを、展開するための手段を提供する。白書は、Open Groupのサービス統合成熟度モデル (OSIMM) について次のように言っている。
これは、完全なSOAへの移行経路に沿って、組織の成熟度を査定する手段を、会社とITの実務者に、提供している。そして経路に沿った各段階で、ビジネス利益を最大化する、漸進的な方法をとるためのロードマップを作成する、プロセスを提供する。このモデルは、7段階の成熟度と、組織やプロジェクトにより定義されたスコープ内で、7次元の考慮すべき事項からできていて、現状の査定と望ましい将来の状態の明確化に役立つ、定量的なモデルの役割をする。
- モデリング言語 -ツールで生成したものや、ツールと自動化された環境間の情報交換の結果を表わす、標準的な方法を提供するメタモデルと表記法を定義する。OMGの 統一モデリング言語 (UML)のようなモデリング言語は、特定のドメインや目的にあわように、モデルやモデリング言語を調整するプロファイルにより、拡張できるだろう。 白書は、OMGの SOAMLは、
UMLを拡張して、SOAのスタイルから得れた、凝集性と結合度を管理する能力を、加えることができた、と述べている。SoaMLは、ビジネスサービスから詳細なITサービスまでの、幅広いドメインと抽象レベルにわたって、適用できる。これらの異なった目的に、共通の言語を使うことは、システムのモデリングや様々な関心事をまとめるのを単純化し、BMMやBPMNなどのビジネスアーキテクチャモデルで表現される、ビジネスの機敏さをもたらす。SoaMLは、サービスモデリングなどのための具体的なプラットフォームを提供する、OASISのSOA参照モデルの具現化をサポートしている、と見ることができる。
- 具体的な/ソリューション アーキテクチャ-ベンダの製品や技術的な製品、標準、プロトコルと設計/アーキテクチャ上の決定の実例によって、具体的あるいは、物理的な実現によって、テンプレートの普遍的、論理的、抽象的な要素を置き換えることで、達成できた参照アーキテクチャの具現化である。 白書に書かれている、業界の参照アーキテクチャの例には、 ARTS XML SOA Blueprint for Retail と Service Oriented Realization of the HTNG Reference Architectureが含まれている。
白書が説明しているように、幅広い範囲のSOA標準があるけれども
...SOAに関する、たくさんの独立したオープンな仕様書や標準に貫かれた、基礎となるコアな概念に、大いなる同意というものが存在する。
これらの標準は、関連しあい、互いの上に成り立っている。
白書は、素晴らしい文書であり、様々な標準間の参照方法やそれらの関係、そして個々の標準をいかにどこで使うべきかについて易しく教えてくれる。