IronRuby を開発する Microsoft チームは大きな難題に直面している。Ruby はその最初のインタープリタである Ruby MRI (CRuby とも呼ばれている) によって主に定義されている。現在進行中の RubySpec プロジェクトではそのドキュメント化を目指しているが,完成には程遠い状況だ。そのため Ruby コンパイラの実装を試みるチームのほとんどは,直接 CRuby のソースコードを参照して作業している。しかし Microsoft にはその選択肢はない。CRuby が GPL でライセンスされていて,数々の法的理由から Microsoft がこれを懸念しているためだ。これは彼らが,リバースエンジニアリングという気の遠くなるような作業を強いられることを意味する。
2009年3月の時点では,IronRuby はドキュメント化された Ruby 仕様の 80% をパスするのみだった。その上 CRuby に比較して 4.5倍,起動時間に至っては 10 倍も遅かった。
しかし8月になって,IronRuby はすばらしい進歩を遂げている。仕様テストの 92.5 % をパスし,CRuby の2倍も高速になった。適応型コンパイラ(adaptive compiler)の効果によって起動時間も大きく改善された。IronRuby 1.0 と命名される完全互換バージョンが,この秋にも完成するものと期待されている。