IE と Mozilla の開発チームが共に現在,DirectX/GPU を使用したページレンダリングを開発中だ。Google も同じことを検討している。
Christian Fortini 氏は 1990年代に Netscape と IE 両方の開発を経験した人物である。氏は昨年より,CPU に代えて GPU を使用した IE のテキストとグラフィックのレンダリング開発を続けている。その最初の成果のひとつは,文字配置の美しさを向上した見栄えのよいフォント表示であり,それを可能にしたのが,テキストのズームや再配置を行うときのサブピクセル単位のポイント制御だ。
次のイメージは GDI と D2D を使用したテキストレンダリングの違い を示している。
恩恵を受けるのはテキストだけではない。すべてのグラフィック表示や図形が対象だ。最も目につく効果は,グラフィック移動のスムーズさとエッジ,カーブ,影などの画質に関するものだろう。また,イメージのスケーリングも DirectX を使用したレンダリングの利点だ。イメージのスケール,ズーム,回転がこれまでよりはるかに早く,スムーズに行われるようになる。これは GDI 使用時には 4-5 フレーム/秒程度だったフレームレートが,40-50 フレーム/秒にまで高速化されるためだ。DirectX を用いてレンダリングしたページの印刷も可能になる予定であり,チームは現在,その実現に向けての開発を行っている。
現時点での障害のひとつは,Flash や Silverlight のような,自分自身でレンダリング機能を備えているページコンポーネントだ。2つの異なるレンダリングエンジンを使用したページを表示するためには,何らかの付加的処理が必要となる。一方で ActiveX コントロールについては,コード修正も必要なく,GDI から D2D の直接使用に変更できる見込みだ。これらの変更は IE9 への組み込みが計画されている。公開はおそらく 2011 年になるだろう。なお Fortini 氏の短いインタビューが Channel 9 にポストされていて,そこで 今回の機能のデモ を見ることができる。
興味深い話がある。Mozilla の Developer Relastion ディレクタである Christopher Blizzard によると,Mozilla も Firefox に対してこれと同じ機能,すなわち Direct2D と DirectWrite を使用したレンダリングを開発中だというのだ。氏の Twitter での発言,“面白いことに,僕たちも Firefox の Direct2D サポートを開発中なんだ - 僕たちの方が先に公開できると思うけどね。:)”。さらに Mozilla では,Tegra 搭載デバイスでの OpenGL サポート に関する開発作業も進行中である。
Google は昨年,GPU を使用して 3D レンダリングを行うブラウザプラグイン O3D API をリリースしている。Chromium に登録された ”Issue 28539: Direct2D サポート調査“ および ”Issue 25541: DirectWrite サポート調査“ によれば Google でも現在,Chrome の DirectX 利用に関する調査中である。問題なのはそれが ”COM 専用になる可能性があり,それゆえ現状のサンドボックス化されたレンダラには適さない“ 点だ。