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適応型再利用 - 土木工学に学ぶ

原文(投稿日:2010/01/08)へのリンク

アジャイル手法は以前よりも主流になり、より広く受け入れられるようになった。しかし、アジャイルのテクニックに含まれている考え方が新しいものでもなければソフトウェア工学の領域に限定されるものでもないということは、アジャイルの初心者(転向した人であれ、信奉者であれ)にとって驚くべきことである。直線的な開発プロセスは土木工学の中核であると信じられているものだが、「なぜ橋を建てるのと同じようにソフトウェアを構築できないのか」というソフトウェア開発に対して時折向けられる批判に対する反応として、ソフトウェアエンジニアはこのような直線的な開発プロセスに対して異を唱えてきた。しかし実は、土木プロジェクトもアジャイル主義者が認めるような方法をしばしば採用しているのである。
 

このクロスオーバーの具体例は、最近の記事にも見ることができる。

Howard Podeswa氏は建築プロジェクトについてModern Analystブログで論じている。

私は友人の一人と夕食を食べていました。実はこの友人も才能あるアーキテクトでありデザイナだったのです。私たちは彼が携わっているプロジェクトについて話をしていました。そのプロジェクトでは、彼は巨大な商業用不動産開発の設計面の責任者でした。そのプロジェクトにおいて特別に挑戦的だと彼を驚かせたことの1つが、設計の進捗に合わせてビルが文字通り上に伸びていくということでした。これが意味しているのは、多くの別々の活動が同時に進行しているということです。アップフロントに設計を行い、それに続いて建築を行うという一本道ではなく、彼らはこのプロジェクトを短いサイクルの集まりで進めていたのです。その都度、複雑な側面や領域についての要件を特定し、建築するのに必要最小限の設計だけを行って、それを建てているのです。

氏は続けて、短い期間で建築を行うことと要件のいくつかが不明なままに設計を行わなければ行けないことに伴う課題に対して、アーキテクトがどのように取り組んでいるのかを論じている。

明日に延ばせるものについては、今日確定させてはいけません。換言すれば、プロジェクトを遅延させずに意思決定を延ばせるならば、決定を遅らせなさい。しかし、意思決定をしなければならないのなら、

将来への制約を最小限にする選択肢を選びなさい。そうすることで誤った意思決定をした際の影響を最小限に抑えることができるのです。

建築デザイナにとってこれがどういう意味を持つのかについて、氏は実践的な具体例を示している。

友人の企業で2つ目の原則がどのように機能しているのかを示す具体例です。デザイナはそのフロアの各部屋がどのように使われるのか、各部屋の大きさとレイアウトがどうあるべきかということすら知る前に、階段を備え付けることを求められました。そこでデザイナはあとでもっとも柔軟に部屋を配置できるように、階段の位置を決めました。この場合、階段を中央におくのは避けるということを意味します。階段を片方に寄せるのに比べ、その後に配置するときの選択肢を狭めてしまうからです。

適応型再利用("Adaptive Reuse")とは、ソフトウェアの世界にも共鳴している土木工学の原則である。適応型再利用とは、古い構造を当初意図された目的とは違うものに適応させるプロセスをさす。アジャイルソフトウェアの世界においては、デザインパターンの利用とリファクタリングが適応型再利用が応用されている例となる。

Scope crêpe blogの著者であるRich Maltzman氏は、変更の必要性とプロジェクトのダイナミクスに適応することは、ピラミッドの建築においてすら必要だったこと、そしてこの問題に対してアジャイルのテクニックがどのように適用できるかについて論じている。

氏の議論はプロジェクトを通じて、その途中における変更に対し、プロジェクトマネージャはどのように自身のアジリティを適応させ、示すべきなのかに関するものだ。

ブログに対するあるコメントには、Damian O’Malley氏とSteven Stark氏によるSlideshareのプレゼンテーションへのリンクが貼られている。このプレゼンテーションは、システィーナ礼拝堂のための指示書に関するもので、明確に表明されたビジョンによって、顧客の要望をかなえ、時に凌駕するプロダクトが生み出され得るということを説明している。

ミケランジェロが受け取った礼拝堂に関する指示書にはこうある。
天井画は神のさらなる栄光のために、そして神の民に霊感を与えるものとなるように描いて下さい。
ミケランジェロはこの指示をもとにフレスコ画を描いた。この絵が表現しているのは、天地創造、楽園追放つまり原罪による人類の堕落、神の怒りによる大洪水と、ノアとその家族の保護。ミケランジェロは何をすべきか知っていましたし、そのプロジェクトの重要性に触発されました。指示がこのようなものであったため、ミケランジェロは知り得る最善の方法をもって細部を実行するよう、集中力を遠慮なく注ぐことができたのでした。

ソフトウェア業界が他の専門分野から学ぶことができるものとして、他にどんなものがあるだろうか?

 

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