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Windows Azure,有料サービスとして一般公開へ

原文(投稿日:2010/02/24)へのリンク

2月1日より,Microsoft のパブリッククラウドサービスである Windows Azure がサービスの 有料化を開始 して,拡大するクラウドマーケットの一角を担うこととなった。パブリッククラウドサービスの間では,無料の "早期導入(early-adopter)" モードから 告知済みの 従量課金型ビジネスモデルへ事業を移行する動きが,ますます一般的になってきている。Azure は Platform as a Service (サービスとしてのプラットフォーム,PaaS) として,最初にそのジャンプを行った事業のひとつである。InfoQ では Microsoft UK の Matt Deacon 氏から,今回の変更の詳細と Azure ユーザへの影響について話を聞いた。

パブリッククラウドサービスとして先行する Amazon Web Service (AWS) と Azure を比較するのは,AWS の Infrastructure as a Service (サービスとしてのインフラストラクチャ,IaaS) と Azure の PaaS というアプローチの抽象レベルの違いを考慮しても,ごく当然のことだろう。AWS と Azure の類似性に関する問いに対して Deacon 氏は,2つのサービスが上位レベルでは似ているように見えても,詳細を見れば重要な違いがいくつもある,と答えている。例えば Windows Azure のような PaaS アプローチでは,パッチの適用やマシンレベルでの管理タスクといったオペレーティングシステムやプラットフォームサービスのメンテナンスは,クラウドプロバイダ (この場合はMicrosoft) の責任範囲となっている。 これによって,Iaas アプローチであれば日常的に存在する心配事を取り除き,エンドユーザの負担をなくしている。

しかし時には,もっと低いレベルでのアクセスや高い自由度が必要なこともある。そのような場合に対処する Azure プラットフォームの将来的な方向性についても,Deacon 氏が情報を提供してくれている。低レベルのコントロールが必要な場合のために,Window Azureの 仮想マシン (Virtual Machine,VM) の管理者(administrator)モードアクセスを提供するプランがある,というのだ。スケジュールはまだ発表されていないが,管理者モードアクセスによって Windows Azure プラットフォームは,開発プラットフォームとしてJava 以上の広がりを見せることになるだろう。管理者モードのサポートによって高まるプラットフォームの自由度が,Iaas クラウドに対する有力な代替手段のひとつになるのだ。

Deacon 氏はまた,Windows Azure は他のクラウドとの親和性を持つためにあらゆることを行う意志がある,と強調する。組織内外の複数のプロバイダによるクラウドサービスをひとつにまとめて,よりコスト効果の高い Service Level Agreement (サービス水準合意,SLA) を得ようとするクロスクラウド(Cross-clound)シナリオの人気の高まりは,サービスプロバイダ自身が商品としての SLA と価格リストをリリースするまでに達している。Deacon 氏によれば Windows Azure は,システム基盤として SOAPRESTXML など相互接続性のあるオープン標準をベースとしているため,クロスクラウド環境への適合性が高い,ということだ。

具体的な例として Deacon 氏は,AppFabric サービスバスとアクセスコントロールサービス を取り上げている。これらは Dynamic Data Center Toolkit などを使って作成したプライベートクラウドと Windows Azure や AWS のようなパブリッククラウドとの間で,セキュアな通信バスを実現するものだ。AppFabric は Enterprose Service Bus アーキテクチャパターンの特徴を数多く備えていて,相互接続のコントロールによってクラウドアプリケーションの動作する場所と運用コストを選択可能にすることを目的としている。

パブリッククラウドの価格が徐々に明らかになるにつれて,アプリケーションのニーズに応えられるものを選ぶための相互比較が行われるのは,自然のなりゆきというものだろう。ただし PaaS と IaaS クラウドのカタログ値的な直接比較はストーリーの一面に過ぎない。Azure のような PaaS サービスには,システムメンテナンス作業が最小で,アプリケーションをクラウドに配置するための最も手っ取り早い方法である,という大きな利点がある。ただしこれは,プラットフォームの技術的な制約下で作業しなければならない,ということと引き換えに得られるものだ。一方 IaaS クラウドでは,インフラ管理という負担のある反面,インフラ(オペレーティングシステム,メッセージングシステムなど)の選択余地が非常に多いという利点がある。

これら以外の形式,例えばプライベート(自身のデータセンタで運用する)クラウド,ハイブリッド(プライベートクラウドとパブリッククラウドを協調させて運用する)クラウド,さらにはクロスクラウド利用(異なったタイプのクラウドサービスを併用してひとつのアプリケーションをサポートする'寄せ集め '形式の配置方法)まで考慮に入れると,状況はさらに難しくなる。将来的には必要性に見合ったサービスプロバイダをピックアップして,複数のクラウドサービスとサービスプロバイダに渡ってデプロイする,ということも考えられるだろう。このシナリオでは選択肢の幅が無制限になってしまうかも知れないが,このようなアプローチのもたらす利益には大きなものがある。

クラウド市場が多様化,複雑化,流動化している現在,それを選択するための情報を与えてくれるのは,おそらくはコスト,SLA,技術的制約の3つだろう。 Azure のようなパブリック PaaS を評価するにせよ,ハイブリッドな Eucalyptus + AWS や Azure + Data Centre Toolkit クラウド を検討するにせよ,あるいはクロスクラウドを採用してコスト/SLA/技術的制約のバランスを最大限に取るにせよ,クラウドを目指すすべての開発者やビジネスにとって,さまざまなクラウドプロバイダのサービスを評価するときに考慮すべきなのはこの3つのファクタなのだ。

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