Caucho の発表 によると,次世代型軽量アプリケーションサーバ Resin 4.0 で同社は Java EE6 Web プロファイルをサポートする意向である。大手ベンダ製品との比較において特に評価の高い Resin 生来の高速性に加え,基準とする Java EE6 プロファイルの見直しにより,Resin はモジュール型アプリケーションサーバの方向にまた一歩進むことになりそうだ。
Java EE6 プロファイルは,Java EE6 認証に必要な全機能から,その一部を省いた技術グループを定義する仕組みである。その理由は現実的なものだ。つまり仕様に完全準拠するのは実装上の負担が大きく,また大部分の人々にとってフルスタックの実装 - 後方互換性や,ユースケース特有になりがちな API (例えば JCA のような) も含まれている - は無用の長物であるからだ。
Web プロファイルはそのようなグループの一例である。この仕様は Web 層の JSF 2,Facelet,JSP,Servlet 3.0 など,数多くの技術をサポートする。さらに Bean Validation や JPA 2 永続化,JTA トランザクション管理,ビジネス層サービスでの EJB 3.1 Lite,汎用コンポーネントモデルの CDI なども含む。EJB 3.1 Lite はここでは仕様の名称であり,EJB 3.1 仕様の限定された実装をいう。Web プロファイルは Web アプリケーションスタックを対象としているため,JAXRS (REST エンドポイント),SOAP, RMI/CORBA, EJB 2.x との後方互換性,非同期サービスやメッセージ駆動 Bean はサポートしていない。
ただしこれらは最小限であって,この範囲を越える実装についての制限はない。その実例が Resin にある。例えば (RMI や SOAP ではなく) Caucho の Hessian 技術を使用したリモーティング層を公開して,最小限の機能だが非常に効率のよい JMS 実装やメッセージ駆動 Bean を提供している。さらに EJB 3.1 Lite コンテナでも,非同期メソッドやスケジュールメソッドなどの機能をサポートする予定だ。
Caucho が Resin で目指している方向について,Caucho の EJB 3.1 Lite コンテナの技術リーダであり,Java EE6 とEJB 3.1 の専門家グループのメンバでもある Reza Rahman 氏に聞いた。氏の説明によれば,最終的な目標のひとつは軽量なアプリケーションサーバの提供であり,もうひとつは可能な部分すべてにおいてプロファイル仕様以上のものを提供すること,ということだ。
Caucho では,サーバ全体を CDI コンポーネントモデルの基本の上に置くことによって,いわば自社製品を使用する形をとっている。最終的にはコンテナの提供する全サービスが,同社の CDI 実装である CanDI 上に配置される予定である。サービス利用者がこの違いを意識する必要はないが,実装面では EJB コンポーネントが,ステレオタイプとして EJB を付与された CDI bean そのものになる。事実 Resin EJB 3.1 Lite コンテナでは,EJB 外部でも EJB サービスアノテーションの利用が可能である。このアーキテクチャは,個別サービスによる構成から Java EE6 仕様に基づいて統一されたコンポーネントモデルへの全面的な移行を反映したものだ。"私たちは現段階では,古い EJB コンポーネントモデルを,進化的に行き詰まったものと考えています。しかし EJB 仕様で定義されているビジネスサービスにとっては,もっと良い方法があるのです。"と Rahman 氏は言う。
Caucho が最終的に Resin で完全な Java EE6 認証を取得するか,という問いに対して,Rahman 氏は明確にこれを否定している。その理由として氏は,古い API は使用されていないし,Caucho は Resin の競争力の維持に必要なものを実現して取り入れていきたいからだ,と説明した。
Rahman 氏はまた,Caucho がコミュニティからのフィードバックに強い関心を持っていること,人々からの提案を歓迎していること,を強調している。Caucho には Quercus という名称の PHP 実装もあり,一般的な評価は高い。さらに Web プロファイルへの準拠に加えて,Caucho は Resin をクラウド対応にする作業も計画中だ。