アジャイルプロジェクトのステークホルダが,チームが採用しているアジャイルのプロセスと実践の効果を測定するために,経験豊富なアジャイルコーチの援助を求めるのはよくあることだ。その意図は欠点を埋めて,チームをより効率的にすることにある。Scott Killen 氏は最近,Yahoo の Scrum Development グループ に アジャイルチームの監査方法 に関するスレッドを立ち上げた。
George Dinwiddie 氏がそこで推奨した方法は,チームメンバとの1対1の面談 だ。氏によればこの方法は,データを見つけ出す上で,チーム全員で回想するよりもずっと効果的だという。さらに氏は,AYE カンファレンスにおいて Johanna Rothman 氏が行った,データの取得方法に関する興味深いプレゼンテーションに言及している。Rothman 氏は評価を行う最高の方法として,自由回答形式の質問を行うこと,面談の落とし穴を避けること,の2つをあげ,さらに 次のように提唱している。
面談の秘訣(tips):
- 可能な限り自由回答形式で質問すること
- 実例を獲得するために,可能な限り行動記述形式で質問すること
- 質問してほしいことを尋ねる「メタ質問」を活用すること
- 管理者としての戦略的質問と,技術者としての戦術的質問とを区別すること
面談の落とし穴(traps):
- "あなたのボスは間抜けじゃないのか?" のような誘導尋問をしないこと。正直な回答は得られないだろうし,質問者の権威,信頼,信用を損ねることにもなる。ひとつの質問で多くを失うことになるのだ。
- "今の仕事が好きか?" のような意見的な質問は避けること。代わりに "仕事の上で役に立つものは?" あるいは "仕事をする上での障害は?" という形式を用いる。
Don Gray 氏は,自身のチーム監査のアプローチについて,スモークジャンパ (smoke jumper) のコンセプト に基づいたものだ,と言っている。
スモークジャンパを知っていますか? 彼らは勇敢で気高い消防隊員です。80 ポンドの装備を身にまとって人里離れた地域へパラシュート降下し,森林火災に立ち向かうのです。ジャンプが上手く行けば,安全に着地できます。しかし火災を消し止めた後には,10 マイル以上も歩いて脱出しなければならない事もあるのです。気弱な者や頭の悪い者,勇気のない者にはできない仕事です。
スモークジャンパのように,コーチはソフトウェアプロジェクトの真っ只中に飛び込み,衝撃を与える必要がある。そのための最良の方法はフットワークを良くして,信頼を築き,目に見える結果に結びつくような,小さく単純な行動を取ることだ。
Alan Dayley 氏は,チームに監査人として参加するのはよい概念ではない,という意見を持っている。「監査」というのが非常に命令的かつ管理的な用語である,との考えからだ。氏によれば,コーチはチームを導いてその改善を手助けする,外部の声のようであるべきなのだ。その上で氏は,次のような戦略を提案する。
Sprint の切り替えのタイミングで参加して,最初の Sprint あるいは数日間は静かに観察するようにします。例えば Sprint のレビューや反省会,企画会に出席して見学し,場合によってはいくつか質問します。そうした後に,そこで確認した知識と実践のギャップを埋める作業を始めるのです。
監査ということばに抵抗を感じるのは Cory Foy 氏も同じようだ。彼は自身の経験を元に,本当の機能障害はチームを越えて組織全体の問題に帰するものだ,という意見を付け加えている。氏は,チームのメンバたちとセッションをひとつずつ行い,彼らのワークフローについても議論するように勧めている。氏のワークフローを,次のように定義する。
もうひとつ,チーム活動において最初にするようにしていることは,彼らのワークフローに関する議論です。顧客の要求が,どのような形で提供するように望まれているのか? これは痛点に関するよい情報を数多く引き出してくれます。
このように Scrum Development グループでは,評価の実施には1対1の対話がよりよい選択である,との同意が取れたようだ。また「監査」ということばを使って監査人として作業することがチームにとって好ましくない,という意見もまとめられた。スモークジャンプをする時にはまず信頼を築き,担当領域に関する情報を収集した上で,自身の任務をチームと共に全うしていくことが重要だ。