最近、W3C Media Annotations Working GroupはOntology for Media Resource 1.0とAPI for Media Resource 1.0のドラフトを公開した。また、プロジェクトの意図を反映させるために、そのUse Casesドキュメントも更新した。
このWorking Groupの基本的な狙いは、Webにおけるメディアコンテンツの爆発に対処するためのAPIとドメインモデルを策定することだ。インターネットにいる全員が使っているオーディオとビデオの単一のフォーマットセットはないし、これからもないだろう。そのため、コンテンツを表現して、異なるフォーマットの別のコンテンツにつなげるための仕組みを構築する必要があるのではないかと彼らは考えた。セマンティックWeb技術の力を活用して、彼らは次のようなことを実現したいと考えている。
- メディアのメタデータを共通の形式で取り出す。たとえ別のフォーマットで別に格納されていても。
- ソースフォーマットによってサポートされているメタデータ間のマッピングを定義する。
- メディアリソースに関するユーザ指定のメタデータを管理する(例えば、レビュー、レーティング、タグ付け)。
- 各種ソースからの構造化されたアノテーションを処理する。
ドラフトでは、25の異なるフォーマットをサポートしており、Cable LabsのVideo-On-Demandフォーマット、Dublin Coreメタデータ、デジタルカメラのEXIF(exchangeable image file format)、Digital BazaarのVideoメタデータ、MPEG ID3タグ、QuickTime、AdobeのXMP、YouTubeのData APIプロトコルなどが含まれている。
オントロジーはDublin Coreなどよく知られている語彙にある用語をたくさん再利用しているが、重要な概念については自身の用語で定義したいと彼らは考えた。ドラフトでは、こうした用語を定義するだけでなく、ネイティブフォーマットのメタデータやアノテーションへの一方向マッピングも規定している。
プロパティには次のような用語が含まれている。
名前 | 説明 |
---|---|
ma:identifier | リソースのURI |
ma:title | リソースのタイトル |
ma:language | リソースで使われている言語(BCP 47) |
ma:locator | コンテンツに関連するURL |
ma:creator | コンテンツの主たる著者 |
ma:contributor | コンテンツへの貢献者 |
ma:location | リソースが撮影、記録された場所 |
ma:createDate | 作成日時 |
ma:keyword | コンテンツに関連するタグ |
ma:description | リソースの簡潔な説明文 |
ma:genre | リソースに関連するジャンル(EBUを推奨) |
ma:copyright | リソースに関連する著作権の記述 |
ma:publisher | コンテンツ発行に責任のある個人もしくは組織 |
ma:compression | 使われている圧縮コーデック |
ma:duration | 時間(秒) |
ma:samplingrate | オーディオサンプリングレート(sps) |
ma:framerate | ビデオフレームレート(fps) |
ma:bitrate | 平均ビットレート(kpbs) |
すべてのプロパティがすべてのフォーマットにマッピングしているわけではないが、重なりがあるところでは、異なるコンテンツの類似性をうまく扱うことができ、人々がこうしたファイルを見つけて表現するのがもっと簡単になるはずだ。例えば、"ma:creator"プロパティは、QuickTimeの"com.apple.quicktime.author"プロパティ、Dublin Coreの"dc:creator"、YouTube Data APIの"media:credit@role"にマッピングしている。各種プロパティには微妙に意味の違いがあるため、現在のところ、異なるフォーマットをマッピングすることはできず、共通の用語にマッピングしているだけだ。
定義されているAPIは、これらのマッピングをうまく使ってコンテンツとのやり取りに関する共通のプログラミングモデルを提供することにより、フォーマット固有のコードを不要にすることを目的としている。以下に図示された2つのシナリオからわかるように、このAPIはクライアントサイドかサーバサイドにあるコードで使うことができる。
原典: http://www.w3.org/TR/2010/WD-mediaont-api-1.0-20100309/API_options.png
これに加えて、Working Groupによって仕様に含めるか検討されている追加要素の候補がいくつかある。
この仕様はまだまだ未完成ではあるが、こうしたメディアフォーマット間、そして、潜在的に別のメディアフォーマット間の共通性をうまく扱えるような、有用な抽象化と動作するコードを生み出せる見込みがある。