プロジェクト規模に関係なく、リスクとその緩和戦略を把握できているとき、ステークホルダは心強く感じるものだ。アジャイルは情報発信器の利用を強く推進している。その情報発信器の考え方に基づき、アジャイリストはリスクのトラッキングと緩和を容易に行える様々なビジュアルなリスク表現法を考案した。
Denis氏は、リスクを明確にビジュアル表示するベストな方法の1つとしてリスクヒートマップを提案した。このマップでは、縦軸はリスク発生率を表し、横軸はプロジェクトやプログラムで実際に問題が発生した場合の影響度の大きさを表している。
Denis氏によれば
リスクを表示するこの方法の利点の1つは、プログラムやプロジェクトがいかに危険かを簡単に理解できることにあります。もしすべてのリスクが図の右上に集まっていたら、管理しているプログラムやプロジェクトは明らかに危険な状態といえるでしょう。
同様に、Mike Griffiths氏はリスクプロファイルグラフを使うことで、リスクをビジュアルにトラッキングできることを提案した。リスクプロファイルグラフでは、リスクを重要度に基づいて積み重ねる。
リスク重要度 = リスク発生率 × リスクが与える影響
リスク重要度のスコアは、他のリスクの上に積み重ねられてプロットされる。リスクとその重要度の履歴が表示されれば、プロジェクトにおけるリスク状況の全体的な把握がより容易となる。
Mike Cohn氏は、リスクバーンダウンチャートの利用を提案した。この方法ではリスクを事前に調査して計算しておくことが必要となる。これはただ単に、主要なリスクの発生率とリスク発生時の損失の大きさの一覧である。Mike氏は、プロジェクトのトップ10リスクを用いるべきだとしている。
たとえば、20%の発生率のリスクを想定する。そして、そのリスクが実際に発生した場合、損失となる日数を15日とする。そうすると15日の20%で、リスクにさらされている度合いは3日となる。リスクバーンダウンチャートは、リスクにさらされている度合い(日数)の合計をプロットして作られる。
理想としては、イテレーションを繰り返すことにより、累積リスクは減少するはずである。累積リスクが減少しない場合、リスクを減らすことを目的とする時間をスプリント内に割り当てる必要がある。
リスクをビジュアル化した図はストーリー用のバーンダウンチャートほど重要でないように思えるかもしれないが、同じぐらい重要であるといえる。Mike Griffiths氏は次のように述べている。
プロジェクトのリスク緩和をトラッキングすることは、プロジェクトを進める上で有効な1つの測定基準になります。機能提供のような主要な測定基準ではありませんが、積極的にコントロールすることでプロジェクトを成功に近づけることができます。