HyperSQL 2.0 が６月７日にリリースされた。５年以上前に HSQLDB 1.8 が登場して以来，今回が初のリリースになる。HSQLDB 1.8 はこれまでに数多くのツールやフレームワーク，アプリケーションに組み込まれてきた。その中には，Microsoft Access の代替に広く使用されている OpenOffice 3.2 productivity suite の 組込データベースオプション も含まれている。 HyperSQL は 100% Java で記述されていて，BSD ライセンスの下に提供される。
新バージョンは，既存のどのオープンソースデータベースエンジンよりも多彩な機能を誇る。今回，SQL の新機能やスケーラビリティの拡張，クエリ最適化，その他の機能が新たに追加された。
HyperSQL のコアは完全にマルチスレッドで動作し，２フェーズロッキングと MVCC (マルチバージョン・コンカレンシ・コントロール/Multi-version Concurrency Control) をサポートする。ともにデータベースリソースへの並行アクセスに対処する機構であり，MVCC などは PostgreSQL を初めとする他のデータベースでも採用されている。またトランザクション制御モードとして，これまでは SERIALIZABLE と READ COMMITTED がサポートされていたが，HyperSQL 2.0 では REPEATABLE READ と READ UNCOMMITTED に相当する，２つの新しいアイソレーションレベルのサポートが追加されている。
SQL スキャナやパーザなどの主要コンポーネントは書き直され，ANSI-92 SQL と SQL:2003 のほぼ完全なサポートと，SQL:2008 の大部分の機能 (オプション拡張の多くを含む) を備えるようになった。これによって BETWEEN 句や OVERLAPS 述語，複数項を持つ IN 式，MERGE 文，MATHIES 述語など，数多くの式や構文が新たに記述可能になった。加えて HyperSQL 2.0 では，SQL と Java に対応するトリガ定義のための完全なシンタックスと，読取専用と更新可能の２種類のビューがサポートされている。SEQUENCE 型の生成もサポートされて，ユニークな数値を容易に生成できるようになった。さらに BIT 型や CLOB，BLOB，SQL 標準 INTERVAL 型など，さまざまなデータ型が追加されている。TIME サポートは拡張されていて，分数秒とタイムゾーンをサポートするようになった。Array 型も使用可能になり，ほとんどの型を構成要素として持つことができる。またデータベースエンジンは，JOIN 句や WHERE 句，IN クエリ，MIN や MAX などの集計関数，ORDER BY 句などにおいて，可能であればすべての有効なインデックスを使用する。今バージョンからストアドプロシージャと関数 (function) もサポートされるようになった。ストアドプロシージャ言語では WHILE ループや IF，CASE WHEN などの手続き型構文や例外処理，集計関数がサポートされている。関数は SQL または Java で定義可能で，Java で記述した場合にはポリモーフィズムのような優れた機能も利用可能である。
HyperSQL 2.0 にはこの他にも，管理や操作を容易にするような小規模な変更が数多くある。今回のバージョンでは，一般型のストレージサイズ最大値が 256GB まで拡張されるとともに，最大 64 テラバイトまでサポートする BLOB および CLOB データが追加されている。最新の JDBC 4.0 互換ドライバと Java 1.6 もサポートされる。注目すべきなのは，Statement と PreparedStatement インターフェースで getGeneratedKeys( ) メソッドがサポートされていることだ。これによる利点は多いが，中でも特に ORM ツールとの連携が改善されるだろう。
全体としては機能満載のリリースだ。今回のリリースは，テスト環境あるいは堅実な組込データベースの選択肢としての，このプロジェクトの人気の高さを証明してみせたものといえる。HyperSQL はマインドシェアも最も高いと思われるが，一方で HyperSQL オリジナル版の作者 Thomas Mueller 氏による H2 や，JDK 6 に JavaDB と同梱されている Apache Derby (元は IBM の CloudScape ) などとの競合にも直面している。
詳細な情報は HyperSQL Web サイト を参照して頂きたい。