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環境コンピューティング : アプリケーションが現れる

原文(投稿日:2010/07/08)へのリンク

サンタフェ複合体は技術者やアーティストに対して"環境コンピューティングの力を実演するための恒久的な展示"の開発への参加を呼びかけた。この展示は12年前に初めて提案された概念やアイディアの商用化のひとつの例にすぎない。

環境コンピューティングはユビキタスコンピューティング(Ubicomp)環境で生じるインターフェイス設計や相互作用に関連している。Mark Weiser氏がゼロックスパロアルト研究所のチーフテクノロジストであった頃、氏はユビキタスコンピューティング(ubicomp)という言葉を作った。氏は単独で、または、John Seely Brown氏(パロアルト研究所のディレクター兼チーフサイエンティスト)と一緒にこの概念を記述するためたくさんの論文を著した。80年代後半から90年代前半の頃だ。MITのOxygenプロジェクトを含め、たくさんの研究と学術プロジェクトが行われた。ubicompの類似の概念にパーベイシブコンピューティングがある。パーベイシブコンピューティングやパロアルト研究所のMEMS/Smart Matterプロジェクトは日用品にコンピューティングとネットワークの力を埋め込むこと携わっている。MEMSの場合は、"スマートモジュール"を作っている。環境知能と環境コンピューティングはこれに近い概念だ。コンピューティングの豊かな環境での人間とコンピュータの相互作用を研究する。

現在のサンタフェ複合体での環境コンピューティング研究の源流はSimTableを含んでいる。SimTableは砂盤(砂を動かして思うままに地理的な形を作ることができる)だ。SimTableは赤外線で砂盤をスキャンして地理的形状を写し取り、シュミレーションソフトウエアを実行する。そして、その結果をプロジェクターが砂盤の上に出力する。このSimTableを使えば、Santa Feの街を囲む地形を砂盤の上い投射することもできる。土地の下生え(木々や低木の茂み、芝)をシュミレーションし、風の早さや方向の設定を制御して、ライターを使って火花(赤外線カメラで補足する)を作れば山火事を発生させられる。このシュミレーションではどのようにして火が広がっていくのか、市街のどの部分が影響を受けるのかがわかる。市街の地図と住民が火から逃れようとする時の交通量を同時に投射することもできる。このSimTableは商用製品で、最初の顧客は消防局や緊急事態を対処するための組織であった。

環境コンピューティングの研究はこのSimTableの技術を取り入れている。しかし、投射できるのは砂盤だけではない。あらゆる表面が対象だ。システムの内部はプロジェクターによって写し取られ測定されている。これによって、シュミレーション結果を壁や床、天井や部屋の中の家具にも投影することができる。シュミレーション(または生のストリーミングデータ)を部屋に投影し、人を配置して、人間の入力を捉えることができる様々な装置を使えば、高度に洗練された"シチュエーションルーム"を作ることができる。また、空のスプレー缶の中にWiiのコントローラを入れて、子供たちに渡せば、子供たちは仮想的な落書きを部屋の壁に"スプレー"することができる。この仕組みは、コンピュータがWiiを追跡することで空のスプレー缶が使えるようになり、描画プログラムが壁に色のついた画像を投影することで、落書きを作成しているのだ。

80年代にはパロアルト研究所が先導してデスクトップ、ラップトップ、タブレット、スマートフォンのような階層構造になっているデバイスを研究してきた。環境コンピューティングはこの動きの次のステップを表しているが、重要な違いがひとつある。いままで研究されてきたデバイスはモデル(計算処理、アプリケーション)、ビュー(ディスプレイ)、コントローラ (入出力機能)を統合していた。しかし、環境コンピューティングでは環境そのものがビューになり、計算処理はローカルのサーバでもクラウドでもどこでも行われ、デバイスは主にコントローラとして利用される。これによって環境内には'コントローラ'の役割を果たすたくさんのデバイスが広まる。レーザーポインタ、Wiiコントローラ、スマートフォン、そして人間のジェスチャも入力と制御の元になり、この入力と制御がソフトウエアのシュミレーションや環境への投影内容に影響を与える。さらに優れた点は、このような環境は本質的に'マルチタッチ'なので、多くの人が同時に利用できる。

サンタフェ複合体はニューメキシコ大学、サンタフェ研究所、ロスアラモス国立研究所と共同研究を行い、科学技術可視化に特化した環境コンピューティングの環境を作ろうとしている。この研究にはプラネタリウムで使われているようなドームに巨大なデータセットを投影して可視化したり、シュミレーションを投影しようとしているプロジェクトも含まれている。ドームの中に立って、内側から太陽が新星になるのを見れば、プラズマの流れが渦巻き、収縮して膨張し、大爆発を起こすのをまるで太陽の中心から見ているように見えるだろう。この研究は未だリリースされていないAnySurfaceという製品に通じている。この製品はAmbient Pixelによって商用化され市場に投入される予定だ。

サンタフェ複合体から"参加の呼びかけ"があったということは、環境コンピューティングが研究段階を離れ、商用のアプリケーションが生まれる素地ができたことを示している。例えば、部屋の壁に仮想的な壁画を描いたり、ベニスのゴンドラの交通量をシュミレーションしたり(サンタフェ複合体で研究中)、離れた場所にいる参加者の姿をそのまま投影する、スターウォーズのジェダイ評議会で使われているようなテレビ会議システムも実現できるかもしれない。

あなたはどんなアイディアを持っているだろうか。

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